米国企業、AI支出はこの1年で6倍以上138億ドルに 実験段階から実装フェーズへ移行する生成AI、スタートアップ投資も依然活況
AIの実装、中小企業が大手を上回る導入ペース
生成AIが「実験的な技術」から「不可欠なビジネスツール」へと進化を遂げていることは、他の複数の調査でも明らかになっている。 ウォートン・スクールのAIセンター(AI at Wharton)とマーケティング調査企業GBKが共同実施した最新調査は、企業のビジネスリーダーによる週次のAI利用率が2023年の37%から72%へと倍増していることを突き止めた。 この調査で特に注目されるのが、中小企業がAI導入で先行している状況だ。同調査では、年間売上5,000万~2億5,000万ドルの小規模企業、2億5,000万~20億ドルの中規模企業が、大手企業を上回るペースでAIを導入していることが浮き彫りとなった。より柔軟な実験的取り組みを可能にする組織体制がAI導入の加速につながっていると推察される。 この状況は、市場競争環境の大きな変化を生み出す可能性がある。GBKのジェレミー・コースト氏はVentureBeatの取材で、中小企業がAIを活用し、コスト効率や生産性の向上だけでなく、新しいビジネスモデルや機能を確立できれば、自社の競争力を高め、大手企業に対抗できるようになる可能性を指摘している。 同調査では、企業におけるAIセンチメントも良好で、Menlo Venturesの調査と同様、今後さらにAI活用が進む可能性が示唆されている。たとえば、調査対象となった企業の90%が、AIは従業員のスキル向上に貢献すると回答。この数字は前年の80%から上昇している。一方、AIによる雇用への懸念は75%から72%へと若干低下。AIを「優れたツール」と評価する企業は58%に達した。 支出規模も拡大の一途だ。今年1,000万ドル以上をAIに支出した企業の割合は40%を超えた。前年、大半の企業におけるAI支出が100万~500万ドルにとどまっていた状況を鑑みると大きな躍進となる。内訳も興味深く、全体の約3分の1がテクノロジーそのものへの投資である一方、残りは従業員のトレーニングやスキル向上、新規採用、コンサルティングサービスなどに向けられていることが明らかになった。 ウォートン・スクールのステファノ・プントーニ教授は、ChatGPTのような技術自体は既にコモディティ化しつつあり、差別化要因はビジネスプロセスへの統合にシフトしていると指摘。そのため、少なくとも短期的には、コンサルタントがAIゴールドラッシュの最大の勝者になるとの見方を示している。