米国企業、AI支出はこの1年で6倍以上138億ドルに 実験段階から実装フェーズへ移行する生成AI、スタートアップ投資も依然活況
AIスタートアップへの投資、生成AIと産業特化型に集中
企業による強気のAI支出動向を背景に、AIスタートアップへの投資も依然として力強い動きを見せている。 CB Insightsの最新レポートによると、2024年第3四半期のグローバルAI関連投資件数は1,245件に達し、2022年第1四半期以来の高水準を記録した。前年同期比では24%の増加と、全体的な投資市場が前期比10%減となる中で、際立った強さを見せる格好となった。
投資規模も拡大傾向にある。平均投資額は前年の1,840万ドルから2,350万ドルへと28%増加した。 特に注目を集める案件としては、xAIの60億ドル調達(シリーズB、評価額240億ドル)、Anthropicの28億ドル調達(シリーズD、評価額184億ドル)、Andurilの15億ドル調達(シリーズF、評価額140億ドル)、マイクロソフトによるG42への15億ドル出資、CoreWeaveの11億ドル調達(シリーズC、評価額190億ドル)などが挙げられる。 地域別では、やはり米国のAIスタートアップ市場が存在感を示す。第3四半期に566件の案件で114億ドルを調達し、グローバルのAI投資総額の3分の2以上、案件数の45%を占めた。これに欧州が279件で28億ドル、アジアが316件で21億ドルと続く。 特に投資を牽引しているのが、生成AIと産業特化型AI分野だ。生成AI企業では、OpenAIの共同創業者イリヤ・サツケヴァー氏が立ち上げたSafe Superintelligenceが10億ドル(シリーズA、評価額50億ドル)、中国のBaichuan AIが6億8,800万ドル(シリーズA)を調達。またMoonshot AIの3億ドル(シリーズB)、コード生成AI企業Codeiumの1億5000万ドル(シリーズC)なども注目を集めている。 産業特化型では、AI駆動の防衛技術を手がけるAndurilの15億ドル調達を筆頭に、バイオテクノロジー企業のArsenalBioが3億2,500万ドル、防衛・セキュリティ分野のHelsingが4億8,800万ドル、サプライチェーン管理のAltana AIが2億ドル、女性向けヘルスケアのFlo Healthが2億ドルを調達するなど、特定分野に特化した企業への投資が目立った。 冒頭のMenlo Venturesの調査では、企業のAIアプローチは、ファインチューニングやプロンプトエンジニアリングからRAGやAIエージェントにシフトしつつある状況も明らかになっている。今後は、これらの分野における支出・投資がさらに活発化する見込みだ。
文:細谷元(Livit)