別府の街中に散らばる作品群。中﨑透が新作を公開
混浴温泉世界実行委員会(大分県別府市) が展開する [ALTERNATIVE-STATE](オルタナティブ・ステー ト) は、半年ごとに1組のアーティストを別府市に招聘し、4年間で8つの作品を制作するアートプロジェ クト。その第5弾作品が公開された。 これまで4作品(2022年度招聘作家:サルキス、マイケル・リン/2023年度招聘作家:トム・ フルーイン、栗林隆)を別府市内各所に設置してきたこのプロジェクト。第5作目の招聘アーティストとなったは中﨑透だ。 中﨑は1976年茨城生まれ。現在、茨城県水戸市を拠点に活動している。言葉やイメージといった 共通認識のなかに生じるズレをテーマに、自然体でゆるやかな手法を使って、看板 をモチーフとした作品をはじめ、パフォーマンス、映像、インスタレーション など、形式を特定せず制作を展開。2006年末より「Nadegata Instant Party」を結成し、ユニットとしても活動する。11年より「プロジェクト FUKUSHIMA!」に参加し、主に美術部門のディレクションを担当。近年の主な展覧会に、美術館初個展となった「FICTION TRAVELER 」(水戸芸術館現代美術ギャラリー 、2022) がある。また多くの芸術祭にも参加。23年には芸術選奨新人賞を受賞するなど、高い評価を得ている。 08年にも別府にアーティスト・イン・レジデンスで滞在した経験を持つ中﨑。今回手がけたのは、中心市街地約25ヶ所に約30点の作品を展開する、 巡回型インスタレーションだ。同作では、近年中﨑が手がける、地域に所縁のある人々へのインタビューをベースにした手法を採用。3名の人物に取材した様々な時代・視点・人生が交錯するエピソードが共同温泉、商店街、公園、路地裏など街中に散らばる。マップを手に取りそれらを巡ることで、ストーリーの中に入り込むことができる。作品を巡るうちに、街を見る視点そのものが変化するような体験を得られるだろう。 なお、中﨑に続く [ALTERNATIVE-STATE] 招聘アーティストは、パノラマティクスを主宰し、アートのみな らずデザインやテクノロジーの分野でも幅広く活躍する齋藤精一。光を用いた作品を。25年2月に別府市内の屋外に設置する予定だ。
文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)