大成建設、「元会長の大立ち回り」が映す将来不安 「新宿西口の再開発」など超難工事でも利益を出せるか
今年6月。スーパーゼネコンの大成建設の定時株主総会で一悶着が起きていた。 「株主総会を乱すようなことはやめてください」「このまま続けると退場させますよ」。司会者から注意を何度も受ける男性。だが男性は静まることなくまくし立てた。 【写真を見る】山内隆司氏(左)の怒りに冷静に対応した大成建設の相川善郎社長(右) 「会社は業績を落としている。利益が落ちている。品質問題も複数起きている。社長の責任だ。社長は辞めるべきだ」 男性の正体は、山内隆司氏(78)。建設業関係者ならば、この名前を知らない者はいないだろう。大成建設で2007年から社長、2015年から会長を務め、選別受注を徹底し同社の業績を立て直した立役者だ。
■歯がゆさを募らせての言動か 業界団体である日本建設業連合会の会長や、日本経済団体連合会(経団連)の副会長も歴任した、かつての実力者である。 山内氏は一株主として株主総会に出席。質疑応答の時間になると、間髪を入れずに手を挙げて発言し、相川善郎社長への非難を繰り返した。会場内が騒然とする中、狼藉は後に続いて質問しようとした一般株主にも向けられた。 「先ほど発言されたのは、元経営者とお見かけする。そんな方が会社を批判するような発言を繰り返していいのでしょうか」。一般株主がたしなめたところ、「山内氏はこの株主にもくってかかった」と、大成建設の株主でもある市場関係者は話す。
「大成建設はここ数年、利益を落としていた。会社を立て直した実績のある山内氏からすると、歯がゆかったのだろう」(市場関係者)。 騒動を前に相川社長は終始冷静だった。そして静かに、次のように応答したという。 「会社の利益だけを重視するのではなく、われわれが求めているのは、顧客に対する新たな価値の創造や社員・お取引先の1人ひとりが活躍できる職場環境の実現です。(山内氏の発言内容は)われわれが目指すマテリアリティー(重要課題)とは違います」
市場関係者は「相川社長は『水掛け論』には持ち込まなかった。落ち着いていた」と振り返る。山内氏は最後は席に着いて、おとなしくしていたそうだ。 この総会後、山内氏は名誉顧問の職を外された。「もう大成建設とは関係のない人」「部外者」と、市場関係者は素っ気ない。 ■怒りを招いた業績は改善の途上 山内氏を知る人々の間ではその性格の熾烈さが知られている。 会長になってからも全国各支店を回り幹部と面談。幹部との間で取り交わした施策やエンゲージメント(約束)をノートにびっしりと書いていた。「そのノートに書き込まれたことは絶対に遂行しないとやばい。『デスノート』と恐れられていた」(大成建設の中堅社員)。