フォーリンラブ ハジメ、夫婦の不妊治療体験「赤ちゃんをこの手に抱くまで夫婦の6年」
副作用のつらさで最初のクリニックを卒業
ミホさんが通っていたクリニックは、1回の採卵でなるべく多くの卵子を確保して凍結しておくという方針でした。 「とにかく自分で注射を打つのがつらくて…。注射を打って30分後くらいの副作用は想像以上で、まるでホットフラッシュが起こったかのような感覚。仕事をしていたので休むわけにもいかず、最寄り駅までフラフラになりながら通ったことを覚えています。排卵誘発の薬も思ったより副作用がキツくて…」 そんな治療に苦しむミホさんを見てハジメさんは考えました。 「不妊治療自体が初めてだったので、どんなクリニックがあってどんな治療方針なのかなど、詳しいことは全くわからず、でも治療はしなければとスタートしました。もちろん評判がいいクリニックを選んだんですけど、仕事をしながら自分で注射を打って、つらそうな姿を見て、これは無理があるんじゃないか…と思い始めました」 そのころ、ミホさんの友だち経由で“最後の砦”ともいわれているクリニックがあることを知ります。 「今までのクリニックのようにどんどん卵巣に刺激を与え、注射を打って卵子をたくさん取るといった方針とは真逆で、なるべく自然な形で排卵させるという方針のクリニックでした。クリニックと相性が合う合わないは人それぞれだと思ったので、今までのクリニックで結果が出なかったのは、もしかしたら自分たちには他の治療法のほうが合うんじゃないかと考えて、転院してみようと思いました」 ミホさんの話に、ハジメさんも「すぐに転院しよう!」と同意。精索静脈瘤手術後も、精子の運動率が芳しくなかったハジメさんですが、サプリメントの服用や生活習慣を変えることで少し運動率が上がったこともあり、善は急げとばかり、新しいクリニックの扉を叩くことになりました。ここまでに約2年の月日が流れていました。
転院して間もなく初めての妊娠判定が!
2019年の年末、2人はクリニックを転院し、すぐに治療を再開しました。それまでと違って排卵誘発のための注射はなく、1日1錠の服薬のみで、ミホさんの体の負担はうんと軽くなったそうです。 「この方法が私の体には合っていたようで、そのときはいい状態の卵子が3個取れました」 このクリニックでも顕微授精によって移植をし、その後迎えた判定の日、妊娠をしていることがわかりました。胎嚢も赤ちゃんの心拍も確認でき、妊娠継続率も高いというお墨付き。ミホさんの喜びは頂点に達しました。早速、両親や周囲の友だちにも報告。役所に母子手帳を取りに行き、ワクワクする気持ちが止まりませんでした。 転院したクリニックも早々に卒業することになり、今度は妊婦健診へ。しかし、初めて訪れた産婦人科で思いがけない一言を告げられました。 「心拍が確認できません。稽留流産(※2)の可能性があります」 このときはまだ10週目。想像もしなかった結果にミホさんの頭は真っ暗になったと言います。 「信じられない、信じたくない、その一言でした」 気がつくと診察室の隣に運ばれ、助産師さんの前で泣いていたというミホさん。その後どうやって家に帰宅したかも覚えていないほどのショックでした。ただ、流産が確定したわけではなく、2週間後にもう一度確認するということでした。 報告を受けたハジメさんも次は一緒に産婦人科へ行きました。結果は流産確定。 「“絶望”という言葉も軽く感じるくらいの気持ちでした。でも、僕よりミホのほうがキツいだろうというのは感じました。僕ができることは、あえて前向きの言葉はやめよう、できるだけ彼女と温度感を合わせようということでした」 実は近しい人に妊娠の報告をしていたハジメさん。病院の外に出て電話で報告をしながら、男泣きしてしまったそうです。 「僕たち夫婦は必ずしも最初から温度感が一緒ではありませんでした。でも、ここがターニングポイントになって、僕も改めて妊活について深く考えるようになりました」