DIC川村記念美術館が休館へ。美術館運営の位置づけを再検討
DIC株式会社(以下、DIC)が運営する千葉・佐倉市のDIC川村記念美術館が、2025年1月下旬から休館することを決定した。 DICは同館とコレクションを保有資産という観点から見た場合、資本効率という側面においては必ずしも有効活用されていないと評価。資本効率の改善を経営課題として掲げる同社としては、社会的価値と経済的価値の両面から、美術館運営の位置づけを再検討すべき時期にあると結論づけ、外部の視点から同社取締役会への助言を得るための「価値共創委員会」を設立したうえで議論してきた。その結果をまとめた委員会から同社取締役会への助言内容が、8月9日開催の同取社締役会において提出された。 価値共創委員会は「美術館の存在価値や目的、理念を明確化する必要があり、とくに株主に対する説明責任が求められる」としたうえで、現状のままの維持・運営は難しいと提言。東京への移転を想定した「ダウンサイズ&リロケーション」か「美術館運営の中止」を案として提出した。 同社取締役会は上述の委員会案を受け止め、今後の美術館運営に関して最終的な結論には達していないとしながらも、次の決定を下した。 まず、美術館運営の効率化のための「ダウンサイズ&リロケーション」を具体的なオプションとして検討し、今年12月までに結論づけ。加えて作品売却による経済価値等を総合的に勘案し、美術館運営の中止の可能性も排除せず詳細を検討するという。 今後の美術館運営の決定を速やかに実行するため、同館は2025年1月下旬からの休館を決定。具体的な休館日程については、決まり次第ウェブサイト等で発表される。 同館は17世紀のレンブラントによる肖像画、モネやルノワールら印象派の絵画から、ピカソ、シャガールなどの西洋近代美術、そして20世紀後半のアメリカ美術まで、広いジャンルの作品を収蔵。なかでもマーク・ロスコの「シーグラム壁画」は「ロスコ・ルーム」に展示され、同館を代表する収蔵品として知られる。過去にはバーネット・ニューマンの《アンナの光》や、日本美術コレクションなどを売却した。