「食事中によくむせる」「食べこぼしが多い」…衰えた「嚥下機能」を改善する筋トレと口腔ケアを紹介!
「食事中によくむせる」「食べこぼしが多い」などの症状が、ご自身あるいはご家族に起きている人はいませんか? 「食べる力」は、年齢とともに衰えてきます。自覚がある場合、もしかすると嚥下障害を起こしているのかもしれません。 【画像】死刑囚が「アイマスク」をするヤバすぎる理由 嚥下障害(摂食嚥下障害)とは、口からうまく食べられない状態をいいます。嚥下機能の低下は、窒息を起こしやすくするだけでなく、誤嚥性肺炎という、高齢者にもっとも多いタイプの肺炎を招く原因にもなってしまいます。肺炎は日本人の主な死因のひとつで、高齢者にとっては、まさに命にかかわる重大な病気です。 そこで、全8回にわたり、食べる力の維持や嚥下機能の回復を目指すためのヒントをQ&A形式でご紹介します。早めに対処して、食べる喜びを末永く味わっていけるよう、正しい知識を身につけていきましょう。前回に引き続き、障害の程度を問わず取り組める食物を使わない基礎訓練のほか、口腔ケアについてご紹介します。 嚥下障害 第4回
Q 全身の筋力アップで嚥下機能は高まりますか?
体全体の動きにかかわる骨格筋と、嚥下にかかわる筋肉の筋力は、必ずしも相関するわけではありません。とはいえ、加齢や栄養不足など、全身のサルコペニア(全身の骨格筋が、生理的な変化を超えていちじるしく減少した状態)が進むような要因が重なれば、嚥下にかかわる筋力も低下していくことが多いと考えられます。 動ける体を保つことは、口から安全に食べられる生活を続ける土台となる取り組みともいえます。 最大筋力の20~30%程度、力を入れる運動を続けることで筋力の維持が可能といわれます。50~60%の力なら筋力増強につながります。 頭部挙上訓練(第4回の記事を参照)など、嚥下にかかわる筋肉を鍛えるトレーニングに加え、可能なかぎり全身運動も続けていきましょう。たとえば、椅子の立ち座りをくり返して脚力をつけるのもよい方法です。
Q 呼吸訓練のやり方は?
呼吸と嚥下には深い関係があります。飲み込む瞬間は息が止まり、飲み込めたら息を吐いて呼吸が再開されます。この流れをスムーズにするために呼吸訓練をしましょう。障害部位やレベルを問わず、嚥下障害のある人はすべて毎日続けたい訓練法です。 ● 口すぼめ呼吸 深くおなかのほうまで息を吸い込んだら、20~30cm先のろうそくの炎を吹き消すつもりで、口をすぼめて息を吐きます。吐く息に集中し、一定の強さで、できるだけ長く吐き続けます。肺機能の強化や、口と鼻の通路をふさぐ機能の強化に有効です。呼吸訓練のなかでもっとも大切な訓練ですので、しっかり続けましょう。 ● ペットボトルブローイング ペットボトルに小さな穴をあけてストローを差し込みます。水を半分くらいまで入れてキャップを閉めてから息を吹き込み、ぶくぶくと泡を立てます。キャップの閉めぐあいは、吹き込む力に合わせて調整を。しっかり閉めるほど、強い力で息を吹き込まないと泡立ちにくくなります。 認知症などで水を飲んでしまうようなら、おもちゃの巻き笛を使うとよいでしょう。長く息を吹き込み、伸びている状態をできるだけ維持します。 口すぼめ呼吸と同様に、呼吸に用いる筋肉を鍛えるのに、非常に有効で、唇をしっかり閉じる練習にもなります。取り組む意欲も高まりやすい方法です。 ● 息こらえ嚥下 呼吸と嚥下のタイミングを合わせる訓練です。息を十分に吸い込んでから息を止め、意識を嚥下に集中させて「ごくん」と空嚥下し、そのあと息を勢いよく吐き出します。呼吸と嚥下の関係を意識しながら飲み込むことで、誤嚥の危険は減らせます。食物は使わない空嚥下で十分に練習しておけば、実際の食事の場面でも応用できます。