米国経済のスローダウンによって米国株式市場のけん引役が交代へ ~「クオリティ」がパフォーマンスを左右する~
2024年後半の米国株式市場は、近づく利下げと経済成長の鈍化の両方を睨みながら、慎重に投資対象を選定する段階に入っていくと考えられる。2023年は、「マグニフィセント・セブン(M7)」といわれた超大型ハイテク株(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタ・プラットフォームズ、エヌビディア、テスラ)が市場を大きくけん引したが、24年後半からは、「M7」の勢いは衰え、「M7以外」の銘柄群のなかから、市場をけん引する銘柄が現れ、市場の物色の裾野が拡大するかたちで市場全体の水準が緩やかに上昇するようなイメージが想定されている。米国市場の見通しをアライアンス・バーンスタイン運用戦略部インベストメント・ストラテジストの柴戸康輔氏(写真)に聞いた。
◆年後半はいよいよ「利下げ」へ
Q1 米国の大統領選挙は現職のバイデン大統領が撤退し、選挙戦の行方が混とんとしているようですが、選挙が米国経済や市場に与える影響をどう考えますか?
どちらの候補が勝ったとしても米国経済に与える影響は限られていると考えています。米国議会は民主党と共和党の勢力が拮抗し、また、両党とも決して一枚岩というわけではありませんので、政策によって協調や離反があって、大統領の意向をストレートに反映させるような大きな政策転換は難しいためです。
ただ、トランプ氏が大統領に返り咲けば、方向性としては、関税強化や脱グローバル化路線を推し進めることになるでしょうから、インフレ(物価上昇)が長引き、金利が高止まりするような状況になる可能性を想定しなければならなくなると考えられます。
Q2 当初の想定よりも利下げ開始の時期が後倒しになっています。米国経済の実態は強いのでしょうか?
強いマクロ環境を背景に、インフレの正常化に時間がかかっているというのが現在の姿です。2024年1-3月期には想定よりも強い消費の状態となり、利下げ開始時期が見直されることになりました。10年国債利回りは、昨年末3.8%の水準だったものが、4月末には4.7%程度にまで上昇しました。しかしその後は、徐々に消費も弱まってきています。4-6月期にはインフレ率も抑えられ、長期金利は4.2%程度の水準に下がってきました。