原采配の妙…なぜ巨人は伝統GT戦2000試合を勝利で飾ることができたのか?
試合後、この継投策について聞かれた原監督は、「いろいろありました」と苦笑いを浮かべ、(先発の)サンチェスも自分の中では、かなり引っ張ったつもりです。リリーフ陣は、打たれる前にと早めにね。しっかりと役割を全員が果たしてくれたと思います」と説明した。 先発のサンチェスには、4回、6回と打席に立たせ、7回の先頭の代打、原口まで引っ張った。近本、糸原と左が続くところで高梨に代えたが、ブルペンの不安を考慮しながらの絶妙の采配だった。 実は、原監督のタクトは初回から激しく動いた。 いきなり阪神の怪物ルーキー佐藤のタイムリー二塁打で1点を失った巨人は、その裏、ドラフト2位、伊藤の立ち上がりを梶谷、ウィーラーの連打で攻め、二死一、三塁の反撃機を作った。そこで5番のスモーク。まだ序曲。腰を据えてクリーンナップに任せる場面である。 初球はカットボールをファウル。その次の球だった。一塁走者の丸がスタートを切った。 梅野は二塁へ送球したが、丸はベース手前でストップ。糸原とマルテが挟殺プレーをしている間に三塁走者の梶谷が同点ホームを駆け抜けていた。ほぼ梅野の送球と同時にスタートを切ったダブルスチールである。阪神バッテリーは、5番打者でのダブルスチールを警戒していないように見えた。ケアする場合、事前にダブルスチールに備えて投手カットなのか、糸原がベースの前に出てのカットなのか、防ぐ隊形を確認しておくが、スモークが援護の空振りをして低めのツーシームをキャッチした梅野は驚いたように二塁へ送球していた。 原采配は完全に阪神バッテリーの裏をかいたのだ。 2回裏にも驚きの戦術があった。同じく一死一、三塁から炭谷がフルカウントまで粘ると一塁走者にスタートを切らせ、センター前タイムリー。1点を勝ち越し、さらに一、三塁にした場面で、打者サンチェスにバントを命じたが、三塁走者の吉川は、セーフティスクイズのスタートを切っていた。結果、ファウルが3度続き失敗したが、阪神バッテリーを揺さぶるには十分だった。 3回にすぐに佐藤にまた2点タイムリーを打たれ再逆転を許したが、5回にクリーンナップが二死から再々逆転劇を演じる。不調の丸、そして岡本が連打。初回はダブルスチールで、せっかくの得点圏で打たせてもらえなかった通算196発のメジャーリーガーが意地を見せた。 ストレートでファウルを打たされカウントを作られた。だが、スモークは、「なんとかしたかった。3-2に追い込まれたが粘って内容ある打席にしたいと思っていた」という。 2-2から意表を突かれたカーブがボールになったことで、立場が逆転。スモークは真ん中に入ってきたカットボールを思い切り引っ張った。低い弾道を描いた来日3号は逆転3ランとなってレフトスタンドで弾んだ。スイッチヒッターのスモークは、メジャーでは左打席で155本、右打席で41本。右打席は、パワーがないとされていた。原監督は、横浜DeNA戦では、左腕の濱口が来ると容赦なくスタメンから外して中島を起用していたが、狭い東京ドームでは右のパワーも十分に通用することをアピールした。メジャーリーガーでさえ原監督の手のひらの上で操縦されているのである。