【毎日書評】戦略より「人を活かすこと」がいまのマネジメントにもっとも必要な理由
私は、今、「人を生かす経営」とは、一人ひとりの素晴らしい人間力が発揮できる企業づくり・地域づくりとなり、地域の未来をひらき、ニッポンを元気にするライトワーク(地域を照らし、歴史に残る“史事”)になるものと考えています。(「まえがき」より) 『「人を生かす」理念経営 “己を修め人を治める”マネジメントの極意』(藪 修弥 著、PHP研究所)の著者は、本書の冒頭にこう記しています。ちなみに、出版に至る経緯については次のような記述があります。 日々、身近に起こっている企業における「人」の問題、とりわけ、従業員が育たない、入社してもすぐに辞めていく、思うように成長していかない、理念が浸透しない、後継者がいない等の現実を、私自身も体験・経験もし、今日的な問題であると感じているからです。 深刻化する人材不足に対応するためにも、労働環境や経営環境の改善にも、すぐに着手すべきです。(「まえがき」より) また、こうした状況であるからこそ、中小企業経営者が先頭に立ち、連携しあい、地域を巻き込みながら運動を展開していくことが求められているのだともいいます。地域における中小企業の役割は大きく、その責任は重いということを自覚すべきだというのです。 なお、こうした「人」の問題は、日常的に各企業のなかにもあり、著者もその解決のための学びと実践に取り組んできたそう。そして、その体験と記憶をたどりつつ、「人を生かす経営」──すなわち各人が人間力を発揮できる企業づくり、社会づくりのためのサポートをするために本書を上梓したのだそうです。 ただし、ここで展開されている考え方は中小企業経営者のみならず、すべてのリーダーが参考にすべきことでもあるように思えます。そこできょうは本書のなかから、「人を生かす」ことの大切さを説いた第2章「人を生かす経営」に焦点を当ててみたいと思います。
世の中も企業も主人公は「人」
人はみんなで社会をつくり、その中で生きています。たくさんのモノなどもつくって、豊かな社会を築いてきました。かしこくて便利なコンピューターや、最近では人工知能も発達していますが、これらを生み出したのは人であり、使っているのも人です。つまり、社会の主人公は人なのです。(38ページより) まさにそのとおりですが、しかし日常生活において、このことをしっかり自覚できている方は意外と少ないかもしれません。したがって私たちは“社会を動かす主人公の人”として、「どうあるべきか」「使命はなんなのか」「どのような行いをすべきか」を追求して生きなければならないのでしょう。 「企業は人なり」といわれることがあります。そこからもわかるように、企業とは、複数人が組織をなしてひとつになり、同じ目的や目標を持って力を発揮する場を意味します。そこで経営者やリーダーは、「その経営は人があってこそ成り立つものである」ということをしっかりと理解する必要があるのです。 いいかえれば、人としてあるべき方向に従業員を導き、ともに歩んでいく存在が経営者であるということ。 人が生きるうえでは、誰しも悩みがつきものですが、その内容はおおよそ「人間関係にまつわること」「お金や経済的な問題」「健康に対する不安」という3つのどれかにあてはまるのではないでしょうか。 従業員の心や行動が一つになれている企業は、互いに尊重し協力し合って大きな力を発揮でき、売上もどんどん伸びるので、人間関係や経済的な悩みは縁遠いものでしょう。(39ページより) そうやって幸せになれたら、ストレスを感じることも少なくなり、従業員の健康にもよい影響を与えるはず。そんなところからも、「人(従業員)」が主人公である企業経営がいかに重要であるかがわかることでしょう。(38ページより)