デシャンボーが怪力で引っこ抜いた案内標識 実は抜いちゃダメだった!? 無罰で済んだ経緯は?
「動かせる障害物」に重さ、大きさの明確な規定はない
今年のマスターズを盛り上げたプレーヤーのひとりに、リブゴルフを主戦場とするブライソン・デシャンボーがいます。 【動画】「早くどけーー!」と“念”を送った!? デシャンボーの謎のジェスチャーに爆笑必至! 初日、7アンダーで単独トップに立ったデシャンボーは、2日目は序盤から一進一退。そして、パープレーで迎えたアーメンコーナーの出口、13番パー5でデシャンボーのティーショットは右サイドの松林の奥に転がってしまいます。
同ホールでは珍しくないトラブルですが、この後のリカバリーが只者ではありませんでした。普通は13番のフェアウェイに戻すのですが、デシャンボーは隣の14番フェアウェイ、同ホールのティー方向にルートを見つけます。そして、その方向で戦況を見つめる大勢のパトロンに、左右に下がってもらいスペースをつくったのですが、そこにぽつんと一本の道案内の標識が立っていました。 それが「プレーの線」の近くで、邪魔になると考えたデシャンボーは、(メディアが伝える情報では)高さ15フィート(約4.5メートル)、重さ30ポンド(約13.6キロ)もある標識を持ち前の怪力で引き抜くと、軽々と肩に担ぎ上げ、脇に移そうとしたのです。 その人工物が「動かせる障害物」の場合は、規則15.2aで「罰なしに、プレーヤーはコース上やコース外のどこででも動かせる障害物を取り除くことができ、その方法は問わない」と規定されており、プレーヤーは「目障り」ということでも取り除きが可能です。 しかし、これほど大きな標識が「動かせる障害物」なのでしょうか? ゴルフ規則では、「動かせる障害物」は「合理的な努力でその障害物やコースを損傷させずに動かすことができる障害物」とだけ定義されています。具体的な重量や大きさの規定はないのです。 ですから、どんなに大きく、重くても、そのプレーヤーが無理なく、合理的な努力で取り除けるものであれば「動かせる障害物」になるわけです。 実は、PGAツアーでは過去にも高さ2メートル超の大きな案内標識が「動かせる障害物」として処理された例があります。 2021年の「WGCデル・テクノロジーズ マッチプレー」、大会3日目のこと。デシャンボーと対戦するトミー・フリートウッドが3番パー4でティーショットを大きく右に曲げてしまいます。 幸いボールは直接グリーン方向を狙える場所に止まっていましたが、10メートルほど前方に「ギャラリー通路」の案内標識が立っていました。フリートウッドはそれが邪魔になるとしてキャディーに取り除きを指示します。 ところが、キャディーが強引すぎたのか、作業の途中、標識の木製のポールが折れてしまったのです。 それでもフリートウッドに罰打はなかったので、同標識は「動かせる障害物」であり、ポールの損傷も取り除きの過程で偶然に発生したとされたのでしょう。