高校で全国3連覇→大学でスランプに…「勝つことへの“怖さ”があったんです」ハードル女王・福部真子(29歳)はなぜ“消えた天才”にならなかった?
「勝ち切れない」葛藤…他種目への挑戦も
大学3年のときには、種目変更を提案されて400mハードルに挑戦した。本格的に出場して3試合目で、関東学生対校選手権を58秒26で優勝。この年の日本ランキングは、100mハードルより400mハードルの方が高かった。 それでも、福部にとっては、種目変更を提案されたこと自体がショックだった。「勝たなければ、意味がない」。指導者にそんな意図がないのもわかっていたが、そう感じてしまった。400mハードルを好きになることもできず、結局やめた。 福部には高校時代、「インターハイ3連覇」以外にも誇れる実績があった。世界ジュニア選手権での準決勝進出だ。20歳未満が出場するため、福部にとっては年齢が上の選手たちも相手だった。その中でセミファイナリストになったことに自信を持っていたのに、この結果に触れられることはなかったという。 「ジュニア世代っていうのもあったと思うけど、誰も覚えていなくて。準決勝は意味がないんだなって」 この経験はいつしか、福部にこんな思いを抱かせるようになった。 「予選や準決勝で落ちたら、評価されない。五輪も確かに出場できたらすごいけど、そのためだけにはやれない。じゃあずっと崇められている結果って何だろうと思った時に、室伏広治さんだったり、末續慎吾さんだったり、世界の決勝の舞台に立った人だけがずっと記憶に残るというイメージがありました」 福部が、「12秒50を切ってパリ五輪の決勝に進出」をめざすと決めたのは2020年だった。まだ、東京五輪で寺田明日香が日本勢21年ぶりの準決勝進出を果たす前のことだ。当時の日本女子ハードラーにとって、決勝進出は今よりもずっと心理的な壁が高かったはず。それでも福部には、「決勝」以外は頭になかった。 「どうせ忘れられるぐらいの結果ならやらないわぁ、と思っていたので」 福部は高校時代の自分を乗り越え、地元の広島に戻った2022年以降、飛躍的な成長を遂げた。自己ベストは13秒13から、12秒69へとジャンプアップ。大学時代の停滞がうそのように、現在は日本のトップ選手として活躍している。
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