なぜ水道水にフッ素を加えるのか、今も物議を醸す背景とは、専門家の見解は
健康や知能への影響は、フッ素添加をやめたらどうなった?
天然に存在するフッ素の化合物(フッ化物)は、米国では1940年代に一部地域で水道水に添加され始めた。米国歯科医師会、米国小児科学会、カナダ歯科医師会は、虫歯予防に効果的だとしてフッ化物を推奨している。米疾病対策センター(CDC)は、「水道水フロリデーション」(水道水に含まれるフッ化物を虫歯予防に適切な濃度に調整すること)を、公衆衛生における10大功績のひとつに挙げている。 ギャラリー:「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 一方で、フッ化物の添加には、これまでさまざまな物議を醸してきた歴史もある。フッ化物とはそもそも何なのか、なぜ水道水に添加されるのか、心配すべきリスクはあるのかについて、以下にまとめた。
フッ化物とは何か
フッ化物は土壌、岩石、水の中に自然に存在する(PFASと総称される有機フッ素化合物とは異なる)。 「あらゆる水源にはフッ化物が含まれています」と、米アイオワ大学予防歯科・地域歯科教授のスティーブン・レビー氏は言う。お茶にさえフッ化物は含まれている。 パン、ヨーグルト、果物など、糖質を含む食品を食べると、細菌が酸を作り、歯の表面のミネラルを失わせて小さな穴を作り出す。 「フッ化物は歯の再石灰化を促し、強化を助けます。すると、ほとんどの人には虫歯が発生しなくなります」と氏は言う。 米国、英国、スペイン、ブラジルをはじめとする一部の国々では、虫歯予防のために地方自治体が水道水にフッ化物を添加している(日本では現在、行われていない)。ドイツでは1991年から食塩にフッ素が加えられている。
水道水へのフッ化物添加
1900年代初頭、研究者らが、水系に含まれる天然のフッ化物濃度が高い地域に住む人々は、「歯のフッ素症」にかかりやすいことに気がついた。フッ素症とは、歯の形成期にフッ化物を過剰に摂取することで起こる症状であり、通常は子どもたちが影響を受ける。 歯のフッ素症とは「エナメル質がまだら模様になる」ことだと、英バーミンガム大学で公衆歯科衛生の上級講師を務めるジョン・モリス氏は説明する。 「要するに、フッ素症は歯に白い斑点や筋が現れるという、見た目の問題なのです」と、米ニューヨーク大学歯学部臨床准教授のシェリリン・ペズーロ氏は言う。 ただし、フッ素症の人々は同時に、水に自然に含まれているフッ化物のおかげで、虫歯の発生率がはるかに低かった。 米国の科学者らは、水に含まれるフッ化物の濃度が1ppm(1リットルあたり1ミリグラム)程度であれば、フッ素症を引き起こすことなく虫歯を予防できると結論づけた。現在の米国における水道水への添加の推奨レベルは0.7ppmだが、これは、人々が歯磨き粉やマウスウォッシュからもフッ化物を摂取しているためだ。