「糖尿病」と上手に付き合うポイント・自己管理のコツを医師が解説!
自己管理を成功させるためのコツは?
編集部: セルフコントロールも大事だと思いますが、成功させるためのコツはありますか? 藤本先生: まずは医療のプロである医師、看護師、管理栄養士、薬剤師などと気軽に話せるようになるのが近道だと思います。糖尿病は血糖値の上がりやすい体質がベースにあるので、完治を目指すのではなく、コントロールしながら付き合っていく疾患です。そのため、糖尿病と診断されたら、たとえ薬が処方されていなくても定期的な通院や検査は続けていくことになります。医療機関とは長い付き合いになるので、ご自身の判断で治療を中断しないでください。 編集部: ほかにもありますか? 藤本先生: 「見える化」も自己管理に大いに役立ちます。例えば、体重コントロールが必要な人は、毎日同じ条件で体重測定をおこない、0.1kgでも増えていたら「今日は強化日」として食事療法や運動療法を頑張る日にするということを繰り返し、徐々に体重をコントロールします。 編集部: 体重を毎日測定するなど、習慣化することも大事ですね。 藤本先生: 現在では、「食事療法サポートのアプリ」もたくさんあります。写真やメニューを選択するとカロリーや糖質量、塩分量などを計算してくれます。管理栄養士のアドバイスがついているサービスもあるので、是非ご自身に合うものを探してみてください。 編集部: アプリは便利なので続けられそうです。 藤本先生: それから、運動療法の見える化には「スマートウォッチ」がおすすめです。小さな動きも含めて1日の活動量を測定できるので励みになりますし、座りっぱなしだと警告をしてくれるタイプもあります。あとは、「ゲーム性のあるスマホアプリ」なども楽しく歩くのに役立つでしょう。 編集部: ほかに活用できるものはありますか? 藤本先生: 血糖値を自分で測る「自己血糖測定」は、状況把握に役立ちます。最近では上腕などに10~14日つけっぱなしで血糖値を持続的に測定する機械も開発されており、夜間を含めた血糖値の動きが非常にわかりやすくなりました。血糖値をリアルタイムで把握することで、血糖値が上がってきたら運動する、食前血糖が高めなら糖質を控えめにするといった行動をとることができ、血糖値をコントロールしやすくなります。 編集部: コントロールを成功させるために、定期的に通院した方がいいのでしょうか? 藤本先生: はい。定期的に内科に通院して血糖、血圧、脂質の適正なコントロールを続けることが重要です。また、合併症の評価として、視力低下を感じていなくても眼底検査を定期的に受けてください。加えて、口腔ケアや歯周病治療は血糖コントロールのために大事なポイントなので、定期的に歯科受診をしましょう。 編集部: 診察だけでなく検診も必要なのですね。 藤本先生: そうですね。それから、糖尿病があるとがんのリスクも高まるため、がん検診もきちんと受けるようにしてください。また、フットケアをおこなうことで、足の切断リスクは大きく減らすことができます。見たり触ったりして確認するとともに、しっかり保湿すること、足に合った靴を履くことがポイントです。さらに、睡眠不足やストレスも高血糖を招きます。生活リズムを整え、ストレスを溜めないように工夫しましょう。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 藤本先生: 糖尿病で医療機関を受診すると、保険診療で医療のプロからアドバイスを受けることができます。また、定期的な検査で病気の早期発見につながったり、早めに対応ができたりすることもあります。「糖尿病専門の医療機関で治療を受けていた糖尿病有病者の寿命と、糖尿病のない人の寿命に差を認めなかった」という報告もあり、「糖尿病とともに元気で長生き」は実現可能な目標です。糖尿病と診断されたら、まずは糖尿病内科を標榜している医療機関を受診してください。医療従事者と二人三脚で上手に血糖値をコントロールし、人生を守っていきましょう。