大久保嘉人「少年時代は怒られてやる気をなくしていた」子どもの才能を伸ばすために一番大切なこと
子どもに夢を託す親の気持ちはわかる。だけど“そっと見守ること”が大事
――スポーツに取り組む子どもに対して怒鳴りつけたり、度を越したダメ出しをしたりする指導者や親御さんも少なくありません。大久保さんはこういう指導についてはどう思いますか? 大久保嘉人: 僕が小さい頃は、怒られながら指導されるのが当たり前でしたが、あれってすごくやる気がなくなるんですよ。逆に「このプレーはよかった、でもここは改善したほうがいい」と褒めることとセットで具体的な指導をされた時は、もっとがんばろうという気になりましたね。今の子どもたちも同じで、怒られたらやる気をなくしてしまうと思うんです。子どものサッカーチームの親御さんたちにも「褒めながら育てるほうがいいよ」とよく言っています。 それと、子どもを通して所属しているサッカーチームを見ていると、指導の仕方はずいぶん変わってきているな、とは思いますね。僕たちの時代は怒られないようにとビクビクしながら練習していましたけど、今の子どもたちはのびのびプレーできているなと感じます。 ――「子どもにプロスポーツ選手になってほしい」と夢を託す親御さんもいますが、大久保さんはお子さんに対してどう思っていますか? 大久保嘉人: 夢を託したくなる気持ちはすごくわかります。でも、自分が叶えられなかった夢を子どもに託したい、という気持ちが強すぎて、あれこれ口出ししてしまう人も多いと思うんです。そこは堪えて、そっと見守ってほしいですね。 実は僕も子どもたちにプロになってほしいと思っているんです。今はなるべく見守るようにしていますけど、正直に言うと本当はすごく葛藤がありますね。いろいろアドバイスしたい、でも言いすぎてやる気をなくしてほしくない……。特にプレーを見たらいろいろと言いたくなってしまうので、子どもたちの試合はあまり見に行かないんです。でも、心の中で期待はしています(笑)。 ――大久保さんご自身も、親御さんにサッカー選手になることを期待されていたそうですね。 大久保嘉人: 父は僕をサッカー選手にしたいと思っていて、「やるからには絶対に人に負けるな」とずっと言われ続けていました。僕自身は父の言葉が励みになっていましたが、やはりプレッシャーを感じることもあったので、同じことを自分の子どもにはしたくないなと。 サッカーに限らずどんなことでもそうですが、夢を追いかけて、もしそれが叶わなかったとしても、目指す過程で得られるものは必ずあります。本気で夢を追いかけたことがある人は、ほかの職業に就いたときにも絶対にうまくいく。それは間違いないと思います。