「ブラジルのトランプ派」大暴れ、大統領選の不正主張し首都占拠 米議会の襲撃ほうふつ、クーデターの狙いも?…記者が見た「分断」の現場
ブラジルの首都ブラジリアで今年1月、右派ジャイル・ボルソナロ前大統領の支持者約4千人が連邦議会、大統領府、最高裁が並ぶ「三権広場」に押し寄せ、それぞれの建物になだれ込んだ。 対立関係にある左派のルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領が勝利した昨年10月の大統領選への不満が動機だったとされる。襲撃者は口々に選挙は不正だったと主張した。その一部には混乱を起こして軍を政治に介入させ、政権を転覆させる「クーデター」の狙いがあったといわれる。捜査の手はボルソナロ氏にも伸びた。襲撃者の肉声を元に事件当時の様子とその後を伝えたい。(共同通信サンパウロ支局 中川千歳) ▽響く爆音 私は1月8日、共同通信サンパウロ支局のある最大都市サンパウロからブラジリアに入っていた。中南米を歴訪中だった日本の林芳正外相が到着することになっていたからだ。ブラジリアの空港に着いた午後4時半ごろ、同僚からの連絡で襲撃の真っ最中だと知った。空港から短い第一報を送り、現場に駆けつけた。
三権広場の手前からは規制線が張られて車が入れなくなっており、徒歩で向かった。広場の手前まで来ると、あたりには白煙が立ちこめ、ボルソナロ氏支持者のシンボルとなっているサッカーブラジル代表のユニホームを着たり、ブラジル国旗を体に巻き付けた多数の人たちが走ったり歩いたりしながら、ばらばらと向かって来る。 「ボーン、ボーン」。爆音が響く。目をこらすと広場に治安部隊が並び、こちらに向けて催涙弾を撃ち込んでいた。上空に旋回するヘリコプターも催涙弾を放っていた。刺激臭を感じながらカメラのシャッターを切ったが、催涙ガスで涙が止まらなくなった。続いて、喉が焼けるようにひりついた。弾は撃ち込まれ続けている。これ以上とどまるのは危険だと考え、来た道を戻りながら、周囲にいたボルソナロ氏支持者に話を聞いた。 ブラジリア在住のアドリアンと名乗る男性は、大統領府、連邦議会、最高裁の建物全てに侵入したと話した。