「ブラジルのトランプ派」大暴れ、大統領選の不正主張し首都占拠 米議会の襲撃ほうふつ、クーデターの狙いも?…記者が見た「分断」の現場
「われわれ愛国者は、大統領選で不正が行われたので投票の権利を取り戻すためにここに来た。ルラ(大統領)は共産主義を敷こうとしている。許し難い。ゴム弾に撃たれて傷だらけだ。催涙弾も受けて窒息しそうになった。でも明日も来る。ここで死んだっていい」と興奮気味に語り、わざわざ準備した横断幕も掲げて見せた。体のあちこちにゴム弾の真っ赤な跡があった。 女性もかなりいた。自営業のバレリア・ペレイラさん(30)も大統領府に侵入した。「私たちは何もしていない。なのに警察が催涙弾やゴム弾を撃って来た。ルラ(現大統領)は勝利していない。選挙は不正だった。だから、私たちは共産主義と戦うために来た」とまくし立てた。驚いたのは彼女が2500キロも離れた、ベネズエラとの国境に近い北部ロライマ州ボアビスタから来ていたことだ。 襲撃者は建物を約4時間占拠し、窓や備品、調度品を破壊した。貴重な絵画や置き時計が壊され、歴代大統領の写真が床に散乱した。窓ガラスは割られ、大量の椅子が屋外に投げられた。その光景は2021年1月6日、米首都ワシントンでトランプ前大統領支持者がやはり、大統領選の結果に不満を募らせ実行した議会襲撃事件をほうふつとさせた。
治安要員は襲撃現場を制圧したその場で約300人を拘束、翌日にさらに千人以上を拘束した。 ▽暗号で集合 4千人もの襲撃者はどのようにしてブラジリアに集まったのか。 現地メディアによると、支持者らは通信アプリ「ワッツアップ」などを使い、当局に襲撃計画を察知されないように「パーティー」の暗号を使って参加を呼びかけた。 襲撃事件の数日前から、アプリのチャット上に現れていたのは「セルマのパーティー」との言葉。セルマは女性の名前だが、陸軍で使われるかけ声「セルバ(密林)」をもじって暗号として使われたとみられる。 アプリのグループ内では襲撃の指示や、警察の催涙弾に備えた手製のガスマスクの作り方、参加者には食事の無料提供があると伝えられるなど、さまざまな情報が共有されていた。 襲撃に関わったとして10日以上拘束されたリオデジャネイロの30代男性販売員も取材に応じた。男性は昨年の大統領選後、リオの陸軍施設前で60日以上泊まり込んで選挙結果に抗議していた。1月7日、集団でバスに乗ってブラジリアに移動した。政府中枢を占拠しマスコミの注目を集めるのが目的だと聞いていた。8日にブラジリアの陸軍本部前に集まった約4千人と、議会などが集まるエリアへ約7~8キロを歩いた。