お客様からかけられた「あなたここの社員?」この言葉で人生が変わった コロナ禍からV字回復を果たし、花で人を幸せにし続けている秘訣とは
農場と町、全体を楽しんでもらえるようにしたい
「今後は、若いリーダーにどんどん仕事を任せて自分の仕事の余力をつくり、花観光農園だけでは実現しにくい『新しい観光』をつくりだすことにも取り組んでいきたいんです」と語る吉宗さん。 そのうちの1つは、訪れる人の目的が「花を見た後、ここにも行ってみたいな」と花の観光に加えてさまざまな来訪動機につながるように、世羅町の魅力ある観光資源や空き家などをリニューアルしていくことだ。町のあちこちに、行きたくなるようなお店や観光スポットを作っていきたい、と話に熱がこもる。 2018年には、吉宗さん個人の事業として、町内のシンボルである歴史旧跡の中の元宿坊をリニューアルした。 江戸時代に建てられた宿坊が、廃墟同然になっていたのを修繕し、そののちは、吉宗さんの妻の五十鈴さんが「雪月風花 福智院」を開業。広島在来茶をはじめ、地域の食材を使った甘味や精進料理などを提供している。 そして今現在取り組んでいるのは、世羅高原農場グループとして5つ目に手掛ける施設だ。 農場と町をつなぐ中間の場所に、季節営業の観光農園とは少しテイストを変えて、水辺の風景も楽しめるガーデン付きの森に、絵本ミュージアムを併設した観光施設を建設中。来春3月ごろのオープンを見込んでいる。 吉宗さんのFacebookには、美しいステンドグラスなどの画像が一部紹介されている。一体どんな施設が出来上がるのだろうか。 吉宗さん自身、父が亡くなったときや代表に就いてから今まで、風水害やコロナ禍による休業、信頼していた社員が何人も一斉に同業他社に入るなど、信じられないことやつらいこと、厳しい時期がいくつもあった。それでもチャレンジし続けられたのは、その都度、農場ファンのお客さんの支えがあったから。そして根底にずっと「世羅を元気にしたい、お客さんに喜んでもらいたい」という思いを持ち続けてこられたから。 吉宗さんは「大学2年生のアルバイトのとき、あのお客さんと出会っていなかったら、今は違う仕事をしていたかも」と、振り返った。 世羅高原農場では、まさに今、ひまわりまつりが開催されている。広大な園内いっぱいに植えられたひまわりは、まもなく見ごろを迎えるとのこと。 取材時にはつぼみだったひまわりたちも、2024年の夏にしか見られない見事な花を咲かせ、大勢のお客さんを笑顔にするのだろう。
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