日本三大神滝の布引滝を越えて、1000万ドルの夜景が広がる「摩耶山」頂上へ
日本百名山のひとつでもあり、近畿地方でも屈指の人気を誇る六甲山。周囲のすべてを市街地に囲まれた、交通アクセス抜群の山で、どこからでも登れるのが特徴のひとつですが、ほかではあまり聞いたことがない、新幹線の駅が登山口に直結している「新神戸駅」を起点に、「1000万ドルの夜景」で有名な摩耶山を目指して、涼を求める沢ルートから登ってきました。 【写真】新神戸駅から出発する摩耶山登山の模様をチェックする(全9枚)
新幹線「新神戸駅」から平安貴族も訪れた名勝へ
海と山が近い神戸の街。賑わいの中心である三宮からわずか1kmほど北側に山が迫り、山と市街地の境界あたりに建っているのが新神戸駅です。 駅のすぐ裏手は山なのですが、じつはここに断層が走っているため、急傾斜の斜面となっています。1995年の兵庫県南部地震(阪神大震災)のときは、この断層は動かなかったので、駅舎は無事でした。 新幹線の線路をくぐり、生田川の上流へ向かって歩きはじめます。駅からわずか15分ほどのところにあるのが、平安の昔から知られる名勝・布引滝です。 布引滝(ぬのびきのたき)は、「日本の滝百選」に選ばれているほか、那智滝(和歌山県)、華厳滝(栃木県)と並んで「日本三大神滝」の一つに数えられています。 4つの滝の総称で、最も下流にある「雌滝(めんたき)」、その上流にかかる「鼓ヶ滝(つつみがだき)」、「夫婦滝(めおとたき)」、一番上に最大の「雄滝(おんたき)」があります。雄滝は落差43m、滝つぼは深く、底は竜宮城につながっているという伝説もあります。 流れ落ちる水が白い飛沫となって、布をたらしたように見えることからその名が付きました。 平安の昔から知られた名勝で、藤原定家、在原業平をはじめ、多くの歌人がこの滝を題材として和歌を詠んでおり、滝へ続く遊歩道には多くの歌碑が建てられています。大河ドラマの登場人物の歌碑もあるかも? 滝を眺めながら脇を登っていくと、見晴らしのいい広場に出ます。 山と海にはさまれた神戸の街並みが一望。目の前に広がる大阪湾の対岸には大阪の街並みと、大阪府と奈良県の県境を成す生駒・葛城・金剛の山々が連なり、晴れた日は遠く紀州の山々まで見渡すことができます。しばらく緑陰の歩きやすい登山道をたどって行くと、次に出てくる見どころは「五本松堰堤」、通称布引ダムです。 明治33年に作られたもので、水道専用としては日本で初のコンクリート積重力式ダム。当時の日本には、まだこのような大規模な土木建設の技術がなかったため、〝お雇い外国人〟の指導によって設計されました。表面は石の化粧張りで、中世ヨーロッパの古城のような重厚感があり、観光スポットとしても人気があります。国指定重要文化財にも登録されている歴史的建造物です。 高さ30mあまりのダムの上は、広大な貯水池になっています。「赤道を越えても腐らない」と、世界中の船乗りに愛された「Kobe water」の水源です。 貯水池のほとりには遊歩道が整備され、水辺の憩いの場としても親しまれています。季節によっていろいろな渡り鳥が訪れるのも楽しみのひとつ。