今季はセ・パ両リーグで「ホームランが1000本に届かない」可能性も…通算306本塁打のレジェンドが挙げた「ボールではない投高打低の“真犯人”」とは
MLBとの大きな違い
どんなに残り試合の多いチームでも20試合を切っている。にもかかわらず、1000本にさえ達していない。このままの水準で今季が終了すると、昨季に比べて約22%の減少となる。 昨季、チームで最もホームランが多かった球団が、今季はどれほど減少したのか見てみよう。23年のセ・リーグで最多チームは巨人で164本だった。ところが今季は70本と半分以下になってしまっている。パ・リーグはオリックスが109本だったが、今季は63本しか打っていない。 試合数や延長の数が違うので単純な比較はできないが、アメリカのMLB(メジャーリーグ)もチェックしておこう。個人のホームラン成績から上位3人をピックアップし、NPBの上位3人と比べてみた(註:今季のMLBの記録は全て9月17日の試合終了時点)。 【ア・リーグ】 1:アーロン・ジャッジ(53本) 2:アンソニー・サンタンダー(41本) 3:フアン・ソト(39本) 【ナ・リーグ】 1:大谷翔平(47本) 2:マルセル・オズナ(37本) 3:カイル・シュワバー(35本) 【セ・リーグ】 1:村上宗隆(27本) 2:岡本和真(24本) 3:タイラー・オースティン(22本) 【パ・リーグ】 1:山川穂高(31本) 2:フランミル・レイエス(日ハム)20本 2:ネフタリ・ソト(ロッテ)20本 2:グレゴリー・ポランコ(ロッテ)20本 チームのホームラン数でも比較をしてみよう。今季、NPBで最もホームランを打っているのはソフトバンクで103本。最も少ないのが広島で49本。一方のMLBはヤンキースの215本が最多で、ホワイトソックスの115本が最小となっている。彼我の差はあまりに大きいと言わざるを得ない。
バットの軽量化
一体、NPBで何が起きているのか。現役時代に通算で306本のホームランを放った、野球解説者の広澤克実氏に取材を依頼した。 「私も選手の声を聞いていまして、どうやら『バットの芯に当たると普通に飛ぶ』ようです。NPBはボールが納入される前に6ダース分を無作為に抽出し、反発係数の検査を行っています。検査はコンピューターも使われた厳正なものです。シーズンごとにホームランが減少していることも考え合わせると『今季だけボールに不具合が生じた』という可能性は低いでしょう。私はボールではなく、原因はバットにあると考えています」 広澤氏は現役の時、アオダモという木で作った、長さ34インチのバットを使っていた。 「今のバッターは、メイプルかバーチという木で作った、長さ33・5インチのバットを使うことが増えてきました。理由は軽量化です。アオダモよりメイプルやバーチは軽く、さらに私のバットより0・5インチ短い分、より軽くなります。なぜ今のバッターは軽いバットを選ぶのかと言えば、ピッチャーの球速が年々、速くなっているからです。昭和のプロ野球では150キロが速球派の代名詞でしたが、今は150キロを投げるピッチャーは普通です。速球には重いバットでは対応できないので軽くするわけですが、この際、飛距離が犠牲になってしまいます」(同・広澤氏)