日本美容外科学会の専門医が答える「美容医療界で増える“直美”問題はどこにあるのか」 未熟な医師の施術がトラブルの大きな要因に
そのほかには、手術後に「イメージしていたのと仕上がりのデザインが違う」「仕上がりに満足できない」などのクレームもよくあります。 実際に何か問題があってもクレームを入れない人も多いので、実際のトラブル件数は、報告されている数よりもはるかに多いと思います。 ――健全な美容医療業界にするには、何が必要でしょうか? 美容医療は本来、多くの人に自信や幸福を与えることができる技術だと僕は思っています。 見た目の仕上がりを重視する診療科ですから、手先の器用さ、美的センスなども必要ですが、医師としての豊富な経験とスキルによって安全な施術ができますし、万全なアフターケアも可能になります。
健全な美容医療界を目指すためにはやはり、形成外科で専門医資格を取得した医師が美容医療を行うべきだと思います。 僕自身もそうですが、形成外科専門医を持つ美容外科医は、美容医療業界で“キャリア組”と呼んでいます。専門医資格は形成外科で10年程度、厳しいトレーニングを積まないと取得できないためです。 今後は、国や学会が厳しい規制を設けて、きちんと訓練を受けた医師だけが美容医療に進めるような仕組みを作るべきではないかと思っています。
■安全で良質な美容医療界に向かうには ――そういう意味では、厚労省が美容クリニックに年に1回、安全管理に関しての報告を求める方針を固めたとされていますが、これについてはどうでしょうか。 よいとは思いますが、安全で良質な美容医療界へと向かうには、報告を求めるだけでは実効性に欠けるように思います。検討されているいくつかの規制の内容も、真摯に美容医療をやっている医療機関にも該当してしまうものもあります。今後、内容をもう少し精査すべきだと思います。
厚労省の対策として、「開業には5年以上、内科や外科など一般診療での経験を求めるようにする」という提案も出ているようですが、それを美容医療に進める要件にしてもいいかもしれないですね。 (1回目の記事:「アプリの自分に近づきたい」若者たちの美容医療) 高須クリニック名古屋院院長 高須幹弥医師 1999年藤田医科大学医学部卒業後、同大学麻酔救急科、藤田医科大学大学院形成外科、群馬県立がんセンター頭頚部外科、ブラジルIvo Pitanguy Instituteでの研修を経て、2007年より現職。医学博士。日本形成外科学会専門医、麻酔科標榜医、日本美容外科学会専門医(JSAS)、日本美容外科学会正会員(JSAPS)。
石川 美香子 :医療ライター