日本美容外科学会の専門医が答える「美容医療界で増える“直美”問題はどこにあるのか」 未熟な医師の施術がトラブルの大きな要因に
研修を終えたばかりの直美のような若手医師では、こうした期待に応えるのは非常に難しく、安全性を損なうリスクも高いので問題なのです。 ■スキルや経験豊富な医師の対応が必要 ――話は変わりますが、今年初めに大阪の美容クリニックで死亡事故が起こったことが報じられました。 報道によると、あの事故は、あご下の脂肪吸引後、顔と首に内出血が生じ、気道が塞がれたことによる窒息死でした。 手術後に顔や首が内出血で腫れていたなら、医師は本来であれば、窒息死するおそれを認識して、適切な医療措置を受けるよう対処するべきだったのに怠ってしまったと考えられます。
万が一、気道閉塞が起こったとしても、気道挿管(気道に空気を通す管を入れる対応)、気管切開(気管を切開してそこから空気を通す管を入れる対応)などの迅速で適切な応急処置を行えば、死亡事故は防げたはずです。 やはり、あごを削るような施術や、あご下の脂肪吸引など、腫れると窒息などにつながる部分の施術はリスクも高い。手術中に行う静脈麻酔でも、麻酔の量を間違えると、患者さんの呼吸が止まってしまうリスクがあります。
高リスクな施術は、麻酔管理能力も含め、スキルや経験の豊富な医師による対応が必要です。 ――美容医療もリスクがあることを知っておく必要がありそうです。 美容医療は病気の人を治す医療ではなく、健康な体にメスを入れて、気にしている容姿を本人の望む形にすることを目的とする医療です。 ですので、死亡事故のような失敗は許されないと思っています。僕自身の信念としても、もし1件でも死亡事故を出したら、引退するつもりでやっています。
――国民生活センターに集まる相談件数も近年、増加しています。 美容クリニックの数が増えるなか、直美の医師など、トレーニングを十分に受けていない未熟な医師も増加しているので、これもトラブルの大きな原因になっていると感じます。 ■「トラブル件数は報告数よりも多い」 ――日本美容医療協会が公開オンライン相談室を実施したところ、起こりえるリスクやダウンタイム(施術後の腫れなどが治まるまでの時間)の説明がないとか、想定された金額と異なる金額が提示されて契約してしまったとか、そういう相談も多いようです。