「成果ゼロ」日中首脳会談で透けて見えた習近平主席のホンネ
日本は「中国へのノービザ渡航」も除外されている
実は私は、今回の日中首脳会談でメルクマール(指標)になると考えていたことがあった。それは、「日本人のノービザ渡航」について、習近平主席自身の口から解禁を発表するかどうかだ。ところが、日中双方の発表文書を見ても、それが見当たらない。 中国は、2020年から2022年まで「ゼロコロナ政策」を貫き、外国人の入国を厳しく制限してきた。それが昨年から徐々に緩和していき、昨年末からは、主に先進国に対して、「ノービザ渡航」を段階的に再開させてきた。具体的には、下記の通りだ。 (1) 2023年12月1日……フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6ヵ国 (2) 2024年3月14日……スイス、アイルランド、ハンガリー、オーストリア、ベルギー、ルクセンブルクの6ヵ国 (3) 2024年7月1日……ニュージーランド、オーストラリア、ポーランドの3ヵ国 (4) 2024年9月30日……ポルトガル、ギリシャ、キプロス、スロベニアの4ヵ国 (5) 2024年11月8日……スロバキア、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、アイスランド、アンドラ、モナコ、リヒテンシュタイン、韓国の9ヵ国 このように、中国はすでに計28ヵ国に対して、「ノービザ渡航」を認めている。特に今月8日からは、韓国に対しても初めて「ノービザ渡航」を許可している。それなのに、日本は除外しているのだ。 その間、世界で日本ほど、官民挙げて「ノービザ渡航」を中国側に強く要求してきた国はなかったにもかかわらずだ。加えて今回、「トランプ復活」を恐れる中国は、日本を引き寄せるため、「ノービザ渡航」という「絶好のカード」を切るチャンスだったにもかかわらずだ。
これからの日中関係はどうなる?
ここから先は仮説だが、中国側は今回、石破茂という日本の新首相に対して「様子見」して、あえてカードを切らなかった。様子見した理由は、日本国内で少数与党で支持率も低く、あたふたしているからだ。 その上で、石破首相に対して、「早期の訪中を歓迎する」と述べた。訪中が実現したら、その時にカードを切ろうという判断だ。 それに対し、石破首相も「ぜひ早期に訪中したい」と答えた。9月に石破氏の会見で私が訪中について訊ねた時にも、肯定的な回答をしていたし、訪中を実現したいはずだ。前任の岸田文雄首相は、約3年で32ヵ国も訪問したが、中国への公式訪問はしなかった。 ところが、同盟国のアメリカを訪問する前に、中国を訪問したら、トランプ新大統領から何を言われるか知れない。そこで今回、南米訪問の帰路に、トランプ次期大統領に挨拶に行って、訪中の「承諾」をもらおうと試みた。 だが、各国首脳から面会の要請が殺到しているトランプ氏は、就任前の外交活動を禁止しているアメリカの法律を盾に、面会をすべて断った。そのため、石破首相の訪中も宙に浮いてしまい、何とも曖昧な発表になった――。 ともあれ、ゴジラのようなトランプ政権が来年1月に発足したら、日中関係は一体どうなってしまうのだろう?
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)