「成果ゼロ」日中首脳会談で透けて見えた習近平主席のホンネ
日本と中国の関係は「進展なし」
続いて(2)は、日本外務省の発表によれば、「両首脳は、意思疎通を継続していくことを確認しました」。つまり、これも新たな進展はなしだ。 日本産牛肉に関しては、2019年12月に、中国政府が輸入再開を発表している。それから5年も経つのに、「意思疎通を継続していく」とは、どういうことだろうか? (3)は、例えば8月26日に中国軍の軍用機が初めて日本の領空(長崎県男女群島沖の領海上空)を侵犯したことなどを指すのだろうが、習主席の回答についての日本外務省の発表はない。 すなわち習主席が「ゼロ回答」だったか、「発表しない約束」で何かを語ったかだ。中国軍を統括する中央軍事委員会主席の習氏がもしも「ゼロ回答」だったなら、日本は舐められたものだ。 (4)は、「習主席から、中国は法治国家であり、法に基づき事件を処理する、また、日本人を含む在中国の外国人の安全を確保する旨発言がありました」(日本外務省発表)。 6月の蘇州と9月の深圳の日本人学校関連の凶悪事件について日本側が求めてきたのは、犯行の動機の解明と再発防止だった。それを習主席は、犯行の動機の解明については、「法に基づき事件を処理する」とはぐらかした。再発防止については、「日本人を含む在中国の外国人の安全を確保する」と、やはり「日本人が被害に遭った問題」から「在中国外国人の問題」へと、論点をすり替えてしまった。 (5)と(6)は、習主席の回答についての日本外務省の発表はない。すなわち、「ゼロ回答」だったのだろう。 このように、日本外務省の発表を見る限り、「新たな進展」は皆無なのだ。 念のため、中国外交部の発表文を見てみたら、思わず目が点になった。石破首相が要求した上記6点について、触れられているのは(1)のみだったのだ。しかも、またもや「核汚染水」と書かれている。 <双方は(中略)日本の福島の核汚染水の海洋放出問題について達成された共通認識について、早急に行動に移すことで合意した> その代わり、習主席の長い「お説教」の後に、石破首相が「台湾問題について、1972年の日中共同声明の立場からいささかも変わりなく順守すると述べた」「日中経済協力の潜在力は巨大であり、中国とデカップリング(分断)するつもりはないと述べた」などと書かれている。 まことに、日本は舐められたものだ。舐められているのは「日本」というより、先の総選挙で大敗し、国内で政治の混乱が続く「石破政権」なのかもしれないが。