森保Jの「4-3-3」に復帰した“絶好調”久保建英の居場所はあるのか…「問題なくできる」アピールも切り札を使えないジレンマ
ゴールの3割はセットプレーから生まれる、と言われるようになって久しい。サッカー界の潮流に遅れてはいけないと、森保ジャパンも今回の活動からセットプレー担当コーチを新設し、栃木SC前コーチの菅原大介氏を入閣させている。 日本サッカー協会の反町康治技術委員長は「サッカーは細分化されてきている。アンタッチャブルだったところに手を出さなければ勝っていけない」と背景を説明した。特に攻撃の部分で、森保ジャパンは深刻な状況に直面している。 6試合を終えたアジア最終予選で総得点はわずか「5」にとどまり、重要性を増すセットプレーからはまだゴールが生まれていない。直接フリーキックは言うまでもなく、コーナーキックからもゴールの可能性はなかなか伝わってこない。 だからこそ右ひざの負傷から復帰し、昨年9月以来となる日本代表招集も果たした久保には、新システムのもとでMF田中碧(23・フォルトゥナ・デュッセルドルフ)が担ってきたプレースキッカーへの期待もかかってくる。 特に27日に対戦する中国は、前回対戦の第2戦のように引き気味で臨んでくる可能性が大きい。攻め込むスペースがない分だけ、セットプレーの重要性が増してくる。 しかし、セットプレー全体について問われた久保は、ここでも冷静に応じた。 「相手が引いてくる、イコール、セットプレーが増えるというわけではないので。どんな形であれ得点につなげていく、という意識がなければ意味がないし、そのなかでセットプレーに頼るのであれば自分たちが主導して、セットプレーを誘発する機会を多く作っていく試合運びができたらいいと思っています」
森保ジャパンが主戦システムとしてきた4-2-3-1で、久保は1-0で勝利した前回の中国戦でトップ下として先発フル出場。ゴールには結びつかなかったものの、前後半を通じて6度獲得したコーナーキックのうち5本を蹴った。 しかし、久保を欠いた10月シリーズのサウジアラビア代表戦で2敗目を喫した森保監督は、続くオーストラリア代表戦から4-3-3を採用。2-1で勝利を手にすると、ほぼぶっつけ本番だった新システムを11月シリーズでも継続させた。 特に初戦で敗れたオマーン代表と敵地で再戦した、11月16日の第6戦前に「いい流れをベースにしていきたい」とシステムを明言。実際に1-0で勝利し、3連勝で2位に浮上した過程で手応えを深めた4-3-3は、メンバーも含めて今後もおそらく変えない。 実は久保自身もバルセロナの下部組織時代に4-3-3でプレーしている。 「いまは前目のポジションで落ち着いていますけど、小さなころは4-3-3のインサイドハーフでプレーしていたので、問題なくできると思っています」 もっとも、ゴールを量産した久保が怪童と呼ばれた4-3-3と、森保ジャパンの4-3-3は似ているようで大きく異なる。理由は中盤の「3」の構成にあると、リハビリ中にスペインの地から日本へエールを送っていた久保が続ける。 「インサイドハーフというよりは、3ボランチ気味になっている。前へ厚みをかけていくためには、もし自分がインサイドハーフで出るなら高い位置を取ろうと思いました」 森保ジャパンの4-3-3はアンカーを遠藤航(28・シュツットガルト)が、前方のインサイドハーフを守田英正(26・サンタ・クララ)と田中が担ってきた。 遠藤と守田は所属クラブでボランチを主戦場としていて、田中も守備力をストロングポイントにしている。まずは中盤の重心を下げ気味にして守備を安定させ、森保監督が掲げる「いい守備からいい攻撃へ」を具現化させていく。 必然的に攻撃はカウンターが多くなり、最下位のベトナム代表に勝利した昨年11月11日の第6戦も、カウンターから3トップの大迫勇也(31・ヴィッセル神戸)、南野拓実(27・リバプール)、伊東純也(28・ヘンク)の連携で奪った1ゴールにとどまった。 インサイドハーフにボランチの要素を求め続けるのであれば、久保がフィットするのは難しい。ウイングにしても、右はオマーン戦でも決勝ゴールを決めた伊東がいまや絶対的な存在となり、左では左利きの久保が窮屈なプレーを強いられてしまう。 「そもそも4-3-3でプレーするチームは世界でも限られていますし、変な話、圧倒的にボールを保持して、ポゼッションに絶対的な自信を持っているチームでしか見たことがない。非常に難しいフォーメーションだと自分では思っています」