「料理を映像で伝える」難しさ。木村拓哉が『グランメゾン・パリ』で挑んだ「空を飛ぶより難しい」こととは
「難しい」という感覚をなくした!? フランス語台詞に苦闘
――今作に関する無理難題のオーダーの中に「フランス語での演技」というところもあったと思うんですが……。 木村さん:むしろそれが「主」ですね(笑)。最初に脚本の初稿というか、まだタイトルすら正式決定していない状態のものを読ませていただいた時には、フランス語のセリフはあるにはあったんです。でもその次にもらった第2稿が、突然ぶ厚くなってるわけですよ。嫌な予感しかしないし、しかも第2稿から台本の開きが“逆”になった(笑)。要はそれだけフランス語のセリフが増えていたということで。
――そんな量のフランス語での台詞と演技は、相当難しかったのでは? 木村さん:それに関しては自分が「難しい」と捉えてしまうと、多分ゴールがなくなっちゃうなと思ったので「難しい」という感覚を自分の中でなくして(笑)、「とにかくこういうもの!」と思うようにしました。もう、やってみるしかないなと。あと、僕らに「フランス語」という“空の飛び方”を教えてくれた人、つまり先生が、諦めない人だったからというのも大きいです。いやすごかったですよ、本当に諦めないし、妥協しなかった。
――それだけに、“パリで暮らしている”リアリティがすごく出ていたような気がします。そういう、役柄の時間の経過や実在感を出すうえで意識的にやられたことは他にありますか? 木村さん:今回グランメゾンチームが再集結しますよ、もう一回尾花っていう奴になりますよ、ということが決まったわけですけど、前のドラマではああいう時間を過ごし、ああいう結末を迎えていて。ドラマとこの映画の間には新型コロナウイルスの流行もあったわけで「あいつその間に何やってたんだろう」となりますよね。一つのヒントとなったのは、映画公開の前日にこの映画の前日譚にあたるエピソードのスペシャルドラマが放送されるんですね。そのドラマが、この『グランメゾン・パリ』へ至るジャンプ台みたいな感じで。その脚本を読んだ時に、その時の尾花がどんな奴なんだろうと考えて、ちょっと髪の毛の色を変えてみたんですよ。だって4年も経っていて、ドラマの最後の時のままで現れるような人ではないな、と思っていたから。それは監督の塚原さんにも内緒だったんですけど。