「料理を映像で伝える」難しさ。木村拓哉が『グランメゾン・パリ』で挑んだ「空を飛ぶより難しい」こととは
――そんな「無茶振り」のパリでのロケでしたが、経験されていかがでしたか? 木村さん:何に驚いたって「背景の説得力」ですよね。何も謳(うた)わなくていいというか、当たり前に歴史と空間がそこに存在している。その大きさ、力強さがすごいなと思いました。
――ドラマシリーズを経ての映画ということで、共演者の方々との関係性が心強さにつながったような部分はありましたか? 木村さん:いやもう、この関係性は前にドラマシリーズをやらせていただいた時にもう構築していたので。「みんなで飛ぶことに挑戦するぞ」という安心感じゃないですけど、そこは良かったと思います。
――木村さんが感じられたこの作品の「難しさ」ですが、フランスロケ以外の部分でも多くあったのではと思います。例えばどんなところだったのでしょう? 木村さん:なんて言えばいいんだろう……要は尾花夏樹という人物が捉えている「料理」だったりコミュニケーションだったりは、本当に身を削っているというか、ある意味「命を張っている」ものなんですよね。料理って、言ってしまえば誰でもできるわけです。でも尾花夏樹という人が料理というものに対して取っている姿勢は、なかなかなテンションなわけで。そんな尾花という人物の表現もそうだし、始まった時から同じような熱を持っている奴らが集まって、消えそうになったものをなんとかもう一度みんなでガードして……一人ひとりの灯火の大きさは限られてるけど、合わせてみたらもっと大きくなったよね、というような話なんですよね。
――たしかに、そういった「熱」を表現する大変さ、難しさはありますよね。 木村さん:そもそもこの映画、言ってしまえば、相当に大変なことをやっているんですよ。料理の味を映像と音で伝えてるだけなんですよ!? 香りもそう。要は具体的に伝える手段がない状態で、観客のお客様に料理の魅力を届けるという……頭、おかしいでしょ(笑)。だから「難しい」っていう言い方でも、正直優しい方だと思いますよ(笑)。