【いま行くべき究極のレストラン】評判のスペイン料理店を訪ねて鎌倉へ
「まず食べたいものありきで旅先を決める」という贅沢な視点がいま、観光や食のシーンで熱い注目を集めている。日本各地で脚光をあびる大人のためのデスティネーションレストランを、ガストロノミープロデューサー・柏原光太郎が厳選して案内。今回は、この店のためだけに鎌倉を訪れる人が絶えないと評判のスペイン料理店「anchoa(アンチョア)」へ。 評判のスペイン料理店「アンチョア」の一皿(写真)
鎌倉は東京郊外の観光地としてはトップクラスの人気を誇る。2023年の観光客数は1228万人。鶴岡八幡宮や長谷寺、鎌倉大仏などの文化的遺産を旅し、七里ガ浜や材木座海岸などの自然景観を楽しみ、小町通りでショッピングするインバウンドの数もうなぎ上りだ。しかし東京からの距離が近いこともあって日帰り客が多いのが悩みの種。夜の営業にリスクがあるため、これまで飲食店経営はむずかしいという声が多かった。 だがここ数年、素晴らしい店がいくつもできてきて、わざわざ鎌倉に食を楽しみにいくフーディーが増加していると肌感覚で感じている。四川料理「イチリンハナレ」や日本料理「鎌倉 北じま」などが代表格だが、私が注目しているのはスペイン料理「anchoa(アンチョア)」。代々木上原で8席のみのカウンタースペイン料理「アルドアック」を経営していた酒井涼シェフが、2021年に移転、鎌倉駅から徒歩3分ほどの場所にオープンさせたスペインレストランである。
酒井シェフとは6年ほど前に、友人の自宅パーティで出張料理人をされていた時に出会ったのが最初。「アルドアック」が美味しいという評判は聞いていたが、当時住んでいた場所から代々木上原がけっこう行きづらかったことから行けないままでいたら、鎌倉に移転したという情報が届いたのだ。 そういえば以前、私鉄沿線にある本格的な日本料理店の料理長と話していたら、客が少ないというぼやきになり、「食いしん坊の方にとっては、うちより京都の方が近いんですよね」と言われたことがあった。鎌倉のように、東京都内から見ると中途半端な距離に感じられる場所があるということだ。