【闘病】大腸がん 「いつ死んでもいい」という想いと時おり訪れる「再発」の恐怖
「がん」は、人生観を変えた貴重な経験。後悔はない
編集部: 病気の前後で変化したことを教えてください。 M.Oさん: 自分では冷静に受け止めていたつもりだったとはいえ、「がん」という事実は無意識のうちに大きなインパクトがあったみたいです。術後、転移がないかなどの検査結果が出るまでは少しナーバスな自分もいて、そんな自分に戸惑いました。 再発、転移がないかの定期的な検査はあと5年続きます。ただ、一度は「これで人生終わるかもしれない」とリアルに感じたため、その後は「生きていてラッキー」「おまけをもらった」といった得をしたような感覚があります。 何事にもあまり大きな期待をしなくなりました。これは元々の性格などもあるとは思いますが「ほどほどで十分」と感じています。「いつ死んでもいい」と思いつつも、時々訪れる再発などの恐怖に自分で驚く、という不思議な感覚が消えません。 編集部: 今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか? M.Oさん: そもそもの経緯が、ほかの病気の検査で見つかったので、ある意味ラッキーだったと思うくらいで、後悔はないです。血便があった時点で受診すれば内視鏡での切除で済んだのかな、とは思いますが、がんになり手術をしたことは、その後の人生観を変えた貴重な経験でした。 手術をしなくて済んだかもしれないなら、そこは後悔しろよと思われるかもしれませんが、私はしていません(笑)。ただしこれは、手術だけで済んで、その後の抗がん剤治療などが必要なかったから言えることだとは思っています。 編集部: 現在の体調や生活はどうですか? M.Oさん: 便通の感覚が変化しました。直腸がんの術後は、どちらかといえば緩くなる方が多いようですが、私は便秘でした。内服薬でコントロールしていますが、安定はしていません。術後3ヶ月で介護の仕事に復帰しました。 ただし、無理のないように、社員からパートになりました。体力の衰えは感じつつも週に5回、8時間勤務をしています。食事は、基本的には何を食べてもOKですが癒着や腸閉塞の不安が常にあり、消化にいいものをよく噛んで食べようと意識するようになりました。 編集部: 医療機関や医療従事者に望むことはありますか? M.Oさん: 私がお世話になった病院は、入院中、主治医も可能な限り顔を出してくれたし、何より、ナースの方が皆さん気持ちよく接してくれてとてもありがたかったです。 私の症例は、特に珍しいものではなく(監修医註:術後偶発症の乳び腹水は比較的稀な疾患)、標準治療が確立しているということで、セカンドオピニオンはとらずに見つかった総合病院で手術しました。 距離的に近かったので、お見舞いも来やすかったようですし、術後の通院もしやすく、結果的に当たりでした。 正直、世間の評判はあまり良くない印象でしたが、私自身が「この主治医になら任せられる」と感じたこと、通院していてナースの皆様で嫌な思いをしたことがなかったことなどから、自分の感覚で決めました。 編集部: 最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。 M.Oさん: 現代はSNSなどで情報は溢れており、見るなという方が難しいと思います。私は、最終的には、がん専門病院のウェブサイト(わかりやすかったし、がん専門という信頼性から)と自分にしっくり来る方のブログを数人決めて見るようにしていました。 リアルな経過を知ることができ、入院時の便利グッズなどの情報も参考になりました。図書館でも色んな本を借りましたが、その中から一冊絞って購入し、教科書代わりにしました。 治療中は主治医との信頼関係が一番ですが、自分自身が賢い患者になることも必要だと思います。知識を詰め込むということではなく、ある程度の情報は入れておいた方が受診時に心構えができたり、やり取りがスムーズになったりすることはよくあるからです。 医師の話に対して、ネットで得た情報を振りかざすのはどうかと思いますが、どの情報を、どれだけ取り入れるかの判断を間違えなければ、ネットも非常に役立つツールだと思います。