九電工が首都圏の再開発需要で急成長、売上高は過去最高の5000億円視野…九州電力への依存度低下
きっかけは70年代に当時、日本一高いビルとして開業した「サンシャイン60」(東京、240メートル)の電気工事を担って全国に名を広めたことだ。その後の営業攻勢で、現在、受注に占める九州外の割合は約3割に達する。2008年には東京の拠点を福岡と並ぶ本社に格上げした。
近年、特に伸びが大きいのがその東京本社の管内だ。20年に開催予定だった東京五輪・パラリンピック(コロナ禍で延期され21年開催)に向けた再開発もあって、売上高はこの10年で3・4倍に拡大した。
「新4K」をアピール
好業績が続く中、最大の課題が人手の確保だ。建設業界では24年4月、残業の上限規制が強化されて人材の奪い合いが過熱しており、ここ数年は新卒の採用が思うように進んでいない。
そこで23年には採用担当者を8人に倍増させ、工業高校などへの訪問を強化した。アピールするのは待遇の改善だ。この春には、1人平均8・2%と過去最大級の賃上げを実施し、今年入社した社員から、奨学金の返還を月1万5000円まで肩代わりする新制度も設けた。
長年、「きつい、汚い、危険」の「3K」職場とみなされ、若者に敬遠されがちだった建設業界のイメージを刷新しようと「給与がいい、休暇が取れる、希望が持てる、かっこいい」と「新4K」をアピールするテレビCMの放映も始めた。
現場の負担を軽くするためにデスクワークが主体の事務系の職員約40人を大型工事の現場に1、2人ずつ配置し、書類の作成などを支援する新たな取り組みにも挑戦している。人事担当の安川仁上席執行役員(62)は「学生に選ばれる職場作りをさらに充実させたい」と話している。
九電への依存度12.0%
1944年に設立された電気工事会社は全国で計9社だった。いずれも現在まで流れをくむ企業が存続し、同じエリアの大手電力会社と資本関係にある。九電工の2024年3月期連結決算の売上高は4690億円で、関西電力系のきんでん(6545億円)、東京電力系の関電工(5984億円)に次ぐ3位だった。
工事の売上高に占める電力会社グループからの受注割合は、九電工の12.0%が最も低く、依存度の低下が目立つ。最も高かったのは北海道電力系の北海電気工事の69.9%で、四国電力系の四電工の51.2%、東北電力系のユアテックの44.6%と続いた。