九電工が首都圏の再開発需要で急成長、売上高は過去最高の5000億円視野…九州電力への依存度低下
新築ビル内に電気ケーブルや送風管(ダクト)を張り巡らせる工事を請け負う九電工(福岡市)は、首都圏で進む再開発の需要を取り込んで急成長を遂げている。12月に創立80周年を迎える今年度の売上高は過去最高の5000億円に達する見通しだ。攻めの経営で、大株主の九州電力から発注される電柱や電線の設置・維持業務への依存度は大きく低下している。(松本晋太郎) 【図表】九電工が近年施工した首都圏の主な大型工事…国立競技場や麻布台ヒルズ
「サブコン」裏方担う
東京都心部の再開発プロジェクト「高輪ゲートウェイシティ」で2026年の完成を目指して建設が進む31階建て超高層ビル。22日に14階部分を訪れると、ヘルメットをかぶった作業服姿の男性が台車に乗り、頭上の空間で直径20センチほどの銀色の管をつなぎ合わせていた。各階の熱源から温風や冷風をフロア全体に行き渡らせるためのダクトだ。
完成すれば天井裏に隠れるこうした空間にダクトや電気ケーブルを張り巡らせるのが九電工の主な仕事だ。ビルを施工するゼネコンから業務を請け負う「サブコン」と呼ばれ、表に出にくい裏方を担う。現場事務所の橋爪修彦所長(54)は「隠れた部分だが、欠かせない仕事だ」と胸を張った。
全国的に同業他社が電気工事を主体とする中、九電工はダクトを中心に空調管の工事も多く手がけるのが特徴だ。売上高に占める割合は約3割と、他社に比べ突出している。
「サンシャイン60」電気工事で名をはせる
終戦前年の1944年、九州各地の14の電気工事会社が軍の意向で合併し、九州電気工事の社名で誕生した。その2年前に電力会社の統合で発足していた「九州配電」(現九州電力)から一部、出資を受け、戦後の復興の中で関係を強化していった。47年には九州電気工事が九州配電から電柱や電線の設置・維持などを請け負う特別な契約を結んでいる。
現在でも毎年約500億円分の工事を受注し、九電工は九電から22・55%の出資を受けるグループ会社でもある。ただ、この安定した経営基盤をベースに早くから事業エリアの拡大に着手し、依存度は工事の売上高の1割程度に低下した。