「3カ月生理が来なかったら受診を」15年無月経だった千葉真子が、反面教師として伝えたいこと―産婦人科医が解説 #性のギモン
産婦人科医・重見大介「産婦人科のかかりつけ医をあらかじめ紹介しておくと安心」
――千葉さんは「娘の健康を守りたい」という親としての思いを語っていました。もし自分の娘がスポーツに取り組んでいた場合、親としてどのようなことに気を付けて見守っていけばよいでしょうか。 重見大介: 確認すべき点は、「初潮のタイミング」「月経周期」「月経痛のひどさ」「体重」の四つです。 ただし、これらはとてもデリケートな話なので、最も重要なのは話ができる関係性の土台をつくることです。保護者やコーチといった身近な方が、体調管理や治療にポジティブであることを伝えてあげたうえで、「若い女性が競技をするときにはこんな問題が起きる可能性があるから、これだけは定期的に確認させてね」といった話をして、定期的かつ客観的に聞いていくことが大切です。 どうしても声かけが難しい場合は、「日本産科婦人科学会」などの信頼のおける専門組織や、複数の医師が推薦するネット記事を印刷したものや、専門家が書いた本を手渡して読んでもらうのも方法の一つです。 もしくは、お母さん自身が通っている産婦人科に、娘さんを一度連れて行ってみるのはいかがでしょうか。お子さんが産婦人科に来てくれれば、医師から必要なお話はできますから「困ったことがあったら、この先生にいつでも相談していいんだよ」と、産婦人科のかかりつけ医をあらかじめ紹介しておくと安心です。 ――千葉さんは「妊娠していない女性が産婦人科を受診する壁」についてもお話しされています。アスリートに限らず、一般女性もそのような抵抗感を抱えている人は多いかもしれません。産婦人科医として何を伝えてあげたいですか。 重見大介: 自分自身の体の劇的な変化に戸惑ったり不安に思ったりするようなことはたくさんあると思いますが、日本ではそうしたことを友だちと気軽に相談できるような文化がまだないので、産婦人科を受診するのに抵抗があるのは当然のことだと思います。 対面で話すことに不安があれば、オンライン診療を行っている産婦人科や、オンライン医療相談サービスもあります。いきなり病院に足を運ぶのが難しくても、そういった段階を少しずつ踏んでいって、最終的には産婦人科に来てくれたらうれしいなと思っています。 ----- 千葉真子 1976年、京都府生まれ。1996年アトランタ五輪女子1万メートルで5位入賞、1997年世界選手権では日本女子トラック長距離種目初となる銅メダルを獲得。1998年にマラソンに転向後、2003年世界選手権で銅メダルを獲得した。2006年に引退後は全国のマラソン大会に出演するほか、市民ランナーの指導や普及活動も行う。2022年4月、からルートインホテルズ女子陸上部のアドバイザーに就任。 重見大介 産婦人科医。「産婦人科×公衆衛生」をテーマに、女性の身体的・精神的・社会的な健康を支援し、課題を解決する活動を主軸にしている。現在は診療と並行して、遠隔健康医療相談事業(株式会社Kids Public「産婦人科オンライン」代表)、臨床疫学研究(ヘルスケア関連のビッグデータを扱うなど)に従事。また、企業向けの子宮頸がんに関する講演会や、学生向けの女性の健康に関する講演会を通じて、「包括的性教育」の適切な普及を目指した活動も積極的に行っている。 文:佐々木ののか 制作協力:BitStar (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました) 「#性のギモン」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の1つです。人間関係やからだの悩みなど、さまざまな視点から「性」について、そして性教育について取り上げます。子どもから大人まで関わる性のこと、一緒に考えてみませんか。