生身の「揺らぎ」を撮る。石井裕也監督『本心』の映画的野心とは? 池松壮亮主演作を徹底考察&評価レビュー
生身の俳優から滲み出る「揺らぎ」に視線を注ぐこと
「本心」という言葉には人間の知識好奇心をくすぐる何かがある。袋とじのページを破りたくなるように、暴きたい。剥ぎ取ってみたいという欲動に駆られる。それもまた、わたしたちに「心」があるからなのだろう。 「真実は、本心はどこにあるのか」 本作は俳優がVFを演じていることで逆説的に人間とAIの決定的な差違にも気づかせてくれる。それは「心」を持つ生身の俳優たちから滲み出るスピリチュアルな「揺らぎ」だ。わたしたちは「情報」ではなくその「揺らぎ」に共鳴し、心を動かされているのではないだろうか。 ラストに提示される、VFとなった母の言葉を本心と受け取るか、それとも――。 その答えはたぶん、あなたの「本心」だけが知っている。 【著者プロフィール:青葉薫】 横須賀市秋谷在住のライター。全国の農家を取材した書籍「畑のうた 種蒔く旅人」が松竹系で『種まく旅人』としてシリーズ映画化。別名義で放送作家・脚本家・ラジオパーソナリティーとしても活動。執筆分野はエンタメ全般の他、農業・水産業、ローカル、子育て、環境問題など。地元自治体で児童福祉審議委員、都市計画審議委員、環境審議委員なども歴任している。
青葉薫