「彼女の可能性は天井知らず」名コーチが明かす“19歳の新星”石井さやかの資質<SMASH>
ゴドウィン氏が日本で合流して以来、石井は全日本選手権で優勝し、大阪のジャパンオープンでは予選の初戦で敗れるも、東レPPOでは本戦ベスト8進出を果たした。最後は、腹筋のケガのため棄権となったが、おそらくはキャリアで最も濃密な3週間を過ごしてきたことだろう。 その間の石井を、コーチはどのように見ていたか? 「まずはスケジュール面で言うと、非常に不運だし、不公平だとも感じました。さやかは東京で全日本の決勝を戦い、翌日には大阪で予選を戦わなくてはいけなかった。そのスケジュールがわかっているのだから、全日本の決勝は早い時間にしてほしいと言ったのですが、受け入れられませんでした。だから、遅い時間の決勝を終えてから移動し、大阪のホテルに着いたのは夜中の1時。正直、全日本で優勝した恩恵が何もないことに、僕は納得できません。 ただ、ジャパンオープンでサラ(齋藤咲良)とアオイ(伊藤あおい)が活躍したのは、さやかにとってもポジティブなことでした。『彼女たちにできるなら、自分にもできる』と思えますから。モチベーションを高め、良い練習を積み、今大会(東レPPO)に備えることができました。難しい状況を非常にうまく乗り切ったし、そんな彼女をとても誇らしく思います」 今回の東レPPOの活躍もあり、石井の世界ランキングは自己最高の203位をマークした。四大大会などの大舞台での活躍が待たれる石井の将来を、コーチ陣はどこに見定めているのか? 「彼女の可能性は、天井知らず」だと、ゴドウィンが即答する。 「今の女子ツアーを見ても、彼女が恐れるべき選手は見当たりません。誰とでも渡り合えると思います。今の世界ナンバー1は、アリーナ・サバレンカ。彼女こそが、今のさやかのゴールです。彼女こそが、さやかが倒すべき選手として、狙いを定める存在です。 もちろんさやかには、まだまだ改善すべき点がたくさんあります。サービスは今重点的に取り組んでいるし、もっとプレーにバラエティが必要です。ただ彼女は常に、上達している。私たちは長い目で目標を立てています。彼女は非常に勤勉なので、常に上達できる。それが、何より大切なことです」 世界の頂点を目的地に定め、同時に今できることに全力を尽くす。経験豊富な水先案内人が先導する“チームさやか”は、どこまでたどり着けるのか――? その新たな船出となる、今回の東レPPOだった。 取材・文●内田暁