「闇バイト」「トクリュウ」事件で「成果を出せない警察」…実力を失う「警察組織」への強烈な不安 【出でよ、令和の「鬼平」】
「雇われたふり作戦」?
警察庁の露木康浩長官が12月12日の定例記者会見で、頻発する「闇バイト」による強盗事件について、捜査員が身分を隠して同バイトに応募する「雇われたふり作戦」(正式名称:「仮想身分捜査」)の効果を強くアピールした。 【写真】大蔵省の「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」いまだからウラ話を明かそう! 大学駅伝ならまだしも、犯罪捜査をゲーム感覚のように「作戦」という言葉を使ってアピールするとは、今の警察官僚の感覚には、世間とのズレを感じずにはいられない。 露木氏は、2022年の安倍晋三元首相銃撃事件をめぐる、警察幹部の一連の引責人事で警察庁長官に昇格したが、その後の闇バイト事件への対応を見ていると、とにかく心許ない。 就任早々「警戒の空白」を防ぐことをスローガンに、警察改革を唱えた露木氏だったが、広域強盗事件「ルフィ事件」に関連して、警察の「不作為」への批判が高まると、「トクリュウ」=「匿名・流動型犯罪グループ」というネーミングの「正体不明の犯罪組織」の類型を唐突に登場させた(2023年7月)。 そしていま、闇バイトを実行犯として集めた強盗殺人事件が、「格差社会」の中でこれまで可視化されてこなかった若者対策に話がすり替えられようとしている。しかし、それでいいのだろうか。 あまり知られていないが、もともと一連の特殊詐欺・強盗事件は、事件の大元にいる海外逃亡犯らの逮捕状を4年間も放置していたことが遠因となっている可能性が高い。 そのうえ、海外逃亡犯らはその「猶予期間」に、中国、カンボジア、タイなどを転々としながら犯罪インフラを構築して「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」を進化させていた。しかし警察はそのことに気付かぬ様子で、2023年から2024年にルフィ事件の被害が14都府県に拡がって初めて押っ取り刀で捜査を本格化させ、以後次々と起こる事件について「もぐら叩き捜査」に追い回されることになる。 そして実行犯らを逮捕するも、現時点において事件の全容解明には程遠い状況だ。2023年1月には東京・狛江の民家に4人組の強盗が押し入り住民の高齢女性が殺されるという事件も発生した。2024年に入ると、「テレグラム」「シグナル」といった、海外を拠点とする匿名性の高いアプリなどのデジタルツールの進化で、サイバー空間から犯罪予備軍の闇バイトの面々が大量にリクルートされるという状況になった。 これらの事件において、実行犯は「犯罪のプロ」でないため、闇雲にハンマーやバールなどの凶器を振り回し、その凶暴性はとどまるところを知らない。今年10月には、横浜・青葉区で一人暮らしの75歳の男性が強盗殺人に会うなど、「体感治安」の急速な悪化で、日本中に社会不安が募っている。