「巨人・ガルベスvs中日・山崎武司」最悪の大乱闘…止めたのは42歳落合博満だった「中日のピッチャーに同情したんだよ、オレは」28年前の真相
21歳松井秀喜「落合さんはすごいです」
しばらく打撃も不調に陥るが、平成7年度高額納税者番付のスポーツ部門で2年連続トップになった5月16日、横浜戦で1点を追う9回一死、4番落合は大魔神・佐々木主浩の147キロの速球を横浜スタジアムの左中間スタンドへ貴重な同点6号ソロアーチを叩き込む。 「落合さんはすごいです。あの一発には、鳥肌が立ちましたよ。僕の四番返り咲きが遠のくのが残念? そんなことが問題じゃないんです。ああいう場面で打てるというのは、それだけで大変なことなんですから」(週刊ベースボール1996年6月17日号) 松井は自分が二ゴロに倒れた直後の一撃に、ベンチで打球の行方を追いながら思わずバンザイ。なぜ42歳にして、球界屈指のクローザーが投じた渾身の直球を力でねじ伏せるようなホームランを打つことができたのか? 引退後に落合は自著の中で、その攻略法を明かしている。 「横浜の大魔神といわれている佐々木主浩もストレートとフォークボールしか持たない投手である。私は、やはり彼のストレートだけを待っていたから対戦成績もいい。だから、セ・リーグの選手たちが彼のフォークに手を出して次々に打ち取られる場面を見ていると、不思議な気がする。伝家の宝刀であるフォークがいつ来るかわからないから打てないというが、なぜフォークを追いかけるのか。ストレートだけを待っていれば高い確率で攻略できるのである。どうせ打てないと思うなら、ストレートだけを待つ勇気を持てばいい」(野球人/落合博満/ベースボール・マガジン社)
長嶋監督「松井? 比べものになりません」
プロ18年目、今なお落合は巨人の大黒柱だった。5月18日のヤクルト戦でブロスから3試合連続の8号2ランを放ち、史上11人目の通算4000塁打を達成。「長くやってりゃいつかはできるさ。でも、オレにはまだまだ先があるから」と貫禄のオレ流節だ。 長嶋監督は故障離脱だけはさせまいと、5月26日の広島戦で背番号6を強制的に休養させたが、4番を欠いた打線は完封負けを喫し、その存在の大きさを改めて浮き彫りにした。落合は5月29日のヤクルト戦で通算2000試合出場を達成すると、神宮の夜空に9号アーチを打ち上げ自ら華を添えた。4月を借金5で終えたチームは、落合が4番に座った5月は25試合で16勝9敗と大きく勝ち越す。 「若手でも頬がこけるくらいの戦いのなかで、落合は本当によくやっています。実際、今の12球団で“四番”という響きがふさわしく感じられるのは、落合くらいでしょう。松井? いえいえ、存在感においてはまだまだ比べものになりませんよ」(週刊ベースボール1996年6月17日号) 松井に開幕4番を託した長嶋監督でさえも脱帽した落合の存在価値。これまで週刊誌を通してオレ流批判を繰り返したOBたちは揃って沈黙し、中にはその技術を素直に絶賛する大御所も出てくる。元日本ハム監督の大沢啓二は自身の連載「大沢親分の天下御免!」で、「松井よ、勝負球の読み方は生きたお手本・落合から盗め!」と提言している。 「バッター・落合の非凡なところは、相手投手の配球を読んで、狙い球を絞るのが実にうまいんだ。それも、勝負どころでの。もちろん、技術的にもず抜けたものを持っているけど、オレは、落合が三冠王を3度も獲った最大の要因は何かと問われれば、それは〈読みのうまさ〉だと答えるわな。松井は、そのあたりを大いに見習うべきだと思うんだ。見習うというより、落合から盗んだらいいんだよ。生きたお手本がいるんだから」(週刊宝石1996年6月13日号)
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