【中学受験相談】弟の受験に不満をぶつける姉の対応方法|VERY
何か意味のわからないことを言われたときには、「この子にこれを言わせているものは何なのか?」って、言葉の背後にあるものを想像してあげるのが必要な場面もありますよね
オ:子どもの場合は何かモヤモヤと抱えていることを正確には言語化できなくて、別の言葉が出てきてしまうことってありますよね。それを額面通りに受け取ってしまうとねじれたコミュニケーションになってしまうことってよくあるんで。何か意味のわからないことを言われたときには、「この子にこれを言わせているものは何なのか?」って、言葉の背後にあるものを想像してあげるのが必要な場面もありますよね。今回の場合、中学生の女の子らしいかわいいコミュニケーションかなって思いますね。ほほえましいなって感じがしました。 K:あー、そっかそっか。 オ:中学受験が終わってちょうど1年ですよね。小学生時代はお母さんがつきっきりと言っていたから、そこから上手に手を離されたと思うんですよ。それは素晴らしいこと。でも中学受験の3年間があまりにも濃密だったから、下の子の中学受験が始まっちゃって、急にお母さんを取られちゃったみたいな、なんかそういうふうに感じているのかもしれない。 K:ふーん。 オ:だからそれくらいでちょうどいいのかもしれないですよ。中学受験が終わってもやれ中間だ期末だって関わってしまう人も多いところで、上手に適度に手を離して。それは素晴らしいこと。だから、それで向こうから「ちょっとお母さんお母さん」ってちょっかい出してきているわけですよね。そういうときは相手してあげればいい。「ほっといてよ」っていう独立心と、「でもまだまだかまって」っていう依存心と、その揺れ動きが思春期だから。すごく真っ当に、中学受験を終えて次のステップに進んでいる証拠だと思います。 K:ああ、よかったです、よかった。 オ:さらに素晴らしいのは、上のお姉ちゃんとはつきっきりだったけれど、そのタイプの違いを見越して、下の子とは違う距離感でできている。お姉ちゃんの成功体験があるから、多少タイプが違っても成功体験にあてはめちゃう人がいるけれど、その子の性格に応じた関わりができているのは素晴らしいと思うから。 K:いやー、それは嬉しいです。 オ:学力的にもちょっと違うと仰っていたから、お姉ちゃんと結果が同じように出るかどうかはわからない。それぞれの中学受験の親和性っていうのかな?アウトプット、結果はそれぞれになると思うけれど、今のお母さんの状況ならこの子はこの子のベストを尽くして、その結果この子にとってご縁あったところに進めると信じてあげていると思います。今のスタンスでいれば、本当の意味でおおらかな中学受験ができるんじゃないかなと。お姉ちゃんはお姉ちゃんのタイプで頑張って、たぶん第一志望のいいところに合格できたんだと思いますが、弟は弟の、こういう中学受験もありなのよねって、納得できる中学受験ができるような気がする。 K:うんうん。 オ:これは相当お母さんの軸がしっかりしていないとできないですよ。なんでお母さんがそれができるのかって、僕、興味あります。 K:いやいや、なんかやっぱりお姉ちゃんもそうだったんですけれど、つきっきりで見ている中で、子どもたちも苦しむんですよ。その姿を見ると自分も苦しくて。でも自分が苦しいと子どもも苦しい、同じ気持ちなんだと気づいたら、これってなんか違うんじゃないかって。 オ:はぁー、すごい。 K:やっぱり子どもなりのペースで、苦しまずにやっていかないとダメだなって。で、下の子の、新しい塾を、全く新しいところを探して、その先生の考えと私の考えが一致するところが見つかったので。ここに通い始めてから私も怒らなくなって、怒ることが減ると子どもたちの笑顔も増えて、家の中でものびのびして。家の時間も良くなったと思います。 オ:僕が理想とする中学受験の構えだと思います。 K:嬉しいです。 オ:それは上のお嬢さんのときは苦しそうだなって気づいて、自分が苦しいと子どもも苦しいと。だけどお姉ちゃんのときは突っ走った?どこか途中で変えたんですか? K:そうですね、途中で。娘が学校生活を満喫していて、それを見ていたら、私の意思じゃなくて、娘の意思を、本当の意味で尊重していくのが大事なんじゃないかって。それに気づいたのが12月。ギリギリに気づいて、全部本人の意思で、最後の最後で全てを決めていった受験だったんですね。 オ:へー!素晴らしい! K:だから全てが納得いく形で終えることができて、だから私と夫も納得いく形で終われたんです。 オ:素晴らしい。一番最初に「私の意欲も違って」とおっしゃったけれど、意欲がないわけじゃないと思うんですよ。やる気がないわけじゃなくて。 K:あー、そうですね。うんうんうん。 オ:肩に無駄な力を入れないで、子どもと向き合えるようになったと。何かを犠牲にしてやらなきゃいけないことじゃないって、お姉ちゃんのときに体験的に学べたってことですよね。そうすると弟さんの中学受験に対して直接的な悩みはなくて? K:そうですね、本当に本人がこの状態で受かるところを受けて、もしダメなら友達がいっぱいいるので、それはそれでいいのかなって。 オ:興味深いお話でした。そのまま進んで、お嬢さんとの関係もああだこうだやりながらやっていければ。また1年後が楽しみです。きっと家族が笑顔になっていると思います。 K:頑張ります。 【 おおたさんからひとこと 】 素晴らしいお母さんでした。でもこのお母さんも最初からそうできたわけではありません。初めての子どもの中学受験で自分ももがき苦しんで、この境地に達したのだと思います。それでいいんです。
【Profile】おおたとしまさ 教育ジャーナリスト。1973年東京都生まれ。東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。リクルートから独立後、育児・教育分野で活躍。執筆・講演活動を行う。著書は『なぜ中学受験するのか?』(光文社新書)など80冊以上。 イラスト/Jody Asano コーディネート/樋口可奈子 編集/羽城麻子