23年で1万1122打席 楽しんだことは一度もない 野村さんと口論「アホか。お前」 話の肖像画 元プロ野球選手・張本勲<26>
《現役生活23年間を振り返って…》 私はね、プロに入って2900試合くらい出ている(公式戦は2752試合、オープン戦、球宴、日本シリーズ、日米野球を含めると出場試合数は2900近く)。公式戦だけでも1万1122打席に立っている。けど一度も楽しくバッターボックスに立ったことはないんですよ。 【写真】世界新記録の756号本塁打を放った王貞治の後方でスーパージャンプする張本勲 今ね、ドジャースの大谷翔平が勝っても負けても「野球は楽しい」って言っている。本当にうらやましい。今は裕福な時代です。幸せだよね。私も今の環境で野球をやりたかった。やっぱり性格なんだろうね。大谷はとてもいい性格で、打っても打たなくても楽しんでいる。私は常に心配しちゃっている。現役生活の間、ずっと「次の打席で打てなかったら、ダメだったら生活はどうなる?」「給料も下がってしまう」ってね。そういうことばかり考えてしまっていたんです。 《生活がかかった?〝1球〟をめぐって猛抗議…》 一度、南海戦で4打数4安打と調子がよかった。ボールも見えていた。で、5度目の打席が回ってきたんです。左投手の〝マッシー〟村上雅則がマウンドに登った。アメリカから帰ってきたばかりだった(※昭和39、40年はサンフランシスコ・ジャイアンツ在籍、通算54試合登板、5勝1敗9セーブ)。球審は沖克己さんという方でした。カウント3ボール、1ストライクからの5球目は微妙でしたが、私は「ボール」と判断。沖さんは「ストライク」のコールでした。当然、抗議しますよね。 それ以前に沖さんに一度、説教されたことがあった。 「お前な、アンパイアにクレームをつけるときは絶対に後ろを向いちゃいかん」と言う。つまりアンパイアに面と向かって抗議するな、ということです。「アンパイアにだって家族がいる。テレビで息子とか娘、女房も見ているんだ。自分の息子みたいなヤツにクレームをつけられたら、お前、うれしいか? 文句があるならピッチャーの方を向いて言え」と教えられた。もっともです。そこは礼儀です。 だからそのとき、ピッチャーの方を向いて、(後方にいる)沖さんに「今のボールでしょ。何でストライクなんですか」と文句を言った。結構、食らいついたんです。そうしたらキャッチャーの野村(克也)さんが割って入ってきた。
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