私への批判は既得権益グループの悪意あるキャンペーン――竹中平蔵が語る「本当の敵」 #令和のカネ
労働者をまったく解雇できないとなると企業は存続できなくなる
20年前の2003年5月、政府は過小資本となっていたりそな銀行に約2兆円という巨額の公的資金を注ぎ込む決定をした。「りそなショック」と呼ばれたこの決定に関わったのが当時、金融担当大臣だった竹中平蔵氏だった。 ──この巨額の決定には賛否がありました。 当時、「金融再生プログラム」という政策をつくりました。不良債権処理問題の中で、私たちはメガバンクに絞ったわけです。懸案だった不良債権の比率を2年で半分にすると謳っていたのですが、実際には2年で約4分の1に減らすことに成功しました。ただ、本当は地銀なども含めた、銀行の改革を3段階でやりたかった。 ──その3段階とは? 一つは不良債権がどれくらいかも含め、資産査定をちゃんとやってもらう。二つ目は、そこで資本不足が生じたら公的資本を注入する。そして三つ目が大事なのですが、不良債権があるところは、ガバナンス(企業統治)ができていないので、それを改めると。 ──問題視する具体的なガバナンスとは。 不良債権をつくった担当者が責任をとらず、常務取締役とか頭取とかになっていく仕組み。終身雇用で年功序列という制度です。 ──それは金融だけに限らず、日本型雇用全体の問題では。 そうです。この問題、私は何度も何度も、繰り返し申し上げています。雇われる側の権利は守らなければならない。だから労働者が団結する権利がある。しかし、どういう状況でも経営側が解雇できないとなると、これは企業としては存続できなくなる。だから、変えなくてはいけないと言っていたんです。
──結局、なかなか正社員を解雇できない「解雇規制」の問題ですね。 整理解雇には、人員整理の必要性など、判例に基づく4要件がありますが、この4要件が厳しすぎる。会社が潰れるまで解雇できない、というのにほぼ等しい。これがあてはまるのは多くは大企業です。中小企業や外資系などは事実上、解雇が野放図ですから。でも、大企業はできない。だから、解雇しやすい非正規雇用を企業は増やしてきた。つまり、解雇規制を守れば守るほど、非正規雇用にしわ寄せがいくんです。 ──非正規雇用が増える背景ですね。だから、日本最大の労働組合の中央組織「連合」は2007年に非正規労働センターをつくりましたが、非正規では基本的に加盟しない人たちが大半です。 そう、正規と非正規という労・労対立になっている。資本と労働ではなくね。結局、大企業の労働組合の多くは、既得権益者なんです。そういう既得権益者が悪意をもってキャンペーンを張っているということですよ。 ──具体的にはどういった人たちだとお考えですか。 それは終身雇用、年功序列を守っている大企業の労働組合とその周辺の人たちです。労働者の代表、連合です。彼らはもう全労働者の2割もいない。でも、すごく政治的な力をもっている。 ──それが敵ですか。解雇規制について発言すると一斉に批判が起きます。 燃えます燃えます。知ってますよ。結局、反対派というのは、労働の流動化を嫌がるし、そもそも中身を十分理解していない。