私への批判は既得権益グループの悪意あるキャンペーン――竹中平蔵が語る「本当の敵」 #令和のカネ
究極のセーフティネットと徹底的な規制緩和で
──ただ、ベーシックインカムはすぐには難しいのではないでしょうか。 すぐにはできません。ただ、日本は所得税で累進課税をとっているのだから、その仕組みを使って所得税で一番低い人にはゼロではなくマイナスにすればいい。つまり、給付です。「負の所得税」「給付付き税額控除」といいます。 ──いくらぐらいをイメージしていますか。 ちゃんとしたシミュレーションをして話すべきですが、おおまかなイメージでは議論があります。たとえば、数年前まで日本銀行政策委員会審議委員だった原田泰さんは、他のいろんな給付を削ったうえで7万円ぐらいならいいんじゃないかと話していた。また、学習院大学の鈴木亘教授は、いろんな控除をまとめると90兆円くらいになると。それを考えると、一人6万円ぐらいなら大丈夫ではないかと。 ──基礎年金に近い額ですね。ベーシックインカムを推す意図はどういうものですか。 究極のセーフティネットということです。たとえば、女性だって子どもを産みやすくなる。休んでいても、ベーシックインカムが入ってくるんだから。あるいは今後AIなどで仕事が奪われたとき、最低限生活できるお金があれば、自由に生活の幅を広げることができるわけです。『ハリー・ポッター』を書いた英国の女性作家は失業保険があったから書けた。それは自由があったからです。そういう時代に入ってきたと思います。
──セーフティネットを敷きつつ、自由を与えると。 その代わり、経済のほうは規制をもっと緩和して、徹底的に自由にする。いまの日本では自動運転もできない。これではイノベーションは起こらないですよ。たとえば教育だって、人が足らないというけど、教員免許も参入障壁なんです。リカレント教育だってリモート教育だってできるのだから、もっと自由にやらせたほうがいい。 ──自由にすると、成功だけでなく失敗も出やすくなります。 だから、失敗時の退出コストも下げなくてはいけません。日本では一回挑戦して失敗したら、もう人生終わりです。身ぐるみ剥がされて、ブラックリストに載って、銀行融資も受けられない。逆に、万が一成功しても、今度は45%の所得税をとられる。メリットが少なくて、コストが大きい。でも、アメリカだと3回ぐらい失敗して初めて一人前と。つまり、破産法の扱いを変えないと、日本で新しいベンチャーは出てこないですよ。 ──ただ、国民性なのか、日本は非常に失敗をおそれて、長いものに巻かれろといった保守的な傾向が強いようにも感じます。 一朝一夕には変わらないですよ。だから、頑張って少しずつでも変えていかないといけない。