日本列島を「くの字に曲げている溝」その深さ、なんと6km…!その底にある「御歳数千万歳の岩」の正体をご存知か
まだ見たことのない、底にある基盤岩
しかし本当のところ、糸静線の断層、すなわちフォッサマグナがどのくらい深いのかは、いまだにわかっていません。これまでにボーリングによる掘削調査は何度も試みられているのですが、基盤岩に達するまで掘り抜いたことは一度もないのです(図「フォッサマグナ西側境界の断面」)。 フォッサマグナの深さが6000mといわれているのは、あくまでも推定です。少なくともいえるのは、隣接する日本アルプスの3000m級の山々との落差は、およそ1万mにも達するということです。
フォッサマグナの境界線はどこ?
ところで、ナウマンはフォッサマグナの西側の境界線となる糸静線をほぼ一直線に 走っていると考えていましたが、正しくはまっすぐな直線ではなく、大まかにはアル ファベットのS字状を描く断層であることが地質調査でわかってきました。 糸魚川から諏訪湖あたりまでは南北方向(北北東―南南西)、諏訪湖から甲府までは北西―南東方向、そして甲府から静岡までは再び南北方向に変化しているのです(図「フォッサマグナの西側境界」をあらためて参照してみてください)。 断層そのものも1本ではなく、短いセグメント(小分け)の集まりであることがわかってきました(図「糸魚川―静岡構造線は複数の断層の集まり」)。諏訪湖周辺では岡谷断層群などとも呼ばれ、同じ走向(断層などの面と水平面との交線の方向)に何本も断層が走っています。 大きな地質の境界は松本盆地の東縁付近にある松本盆地東縁断層で、東側が上昇するような正断層であると考えられています。これに対して塩尻あたりより南の糸静線は、逆に西側が上昇するような逆断層となっています。 こうした糸静線の逆断層は、新第三紀の後期(約230万年前)以降でみられます。このことから、糸静線の活動や形成は、おもに第四紀に入ってからであろうと考えられます。これはフォッサマグナの西側の境界を考えるうえで重要です。つまり、現在われわれが見ている西側の境界は、最初にフォッサマグナが形成されたあとで糸静線の活動によって大きく改変している可能性が高いということです。 では、一方のフォッサマグナの東側の境界線はどこにあるのでしょうか。じつは、これがフォッサマグナの謎の一つなのです。次節では、この謎がどういうものなのか、見てみたいと思います。難解な推理小説のようで、地質学の謎の面白さをお伝えできると思います。 * * * フォッサマグナの西端縁については、糸魚川―静岡構造線の活動により変動していると聞くと、まさに日本列島が生きている感じが伝わってきます。さて、一方の東側の境界は謎に包まれているとのことです。いったい、どうしてなのでしょうか? さらに、フォッサマグナには、南北でもその構造に謎があるとか。 次回は、フォッサグナの東西問題の東の謎と、南北の謎を訪ねてみたいと思います。 フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体 明治初期にナウマンが発見した、日本列島を真っ二つに分断する「巨大な割れ目」フォッサマグナ。その成因、構造などはいまだに謎に包まれている。日本地形を作る謎の巨大地溝に、地学のエキスパートが挑む!
藤岡 換太郎
【関連記事】
- 【謎の東端、そして南北の謎…】日本列島を真ん中で折り曲げる「フォッサマグナ」…なんと、南と北では「まったく違う」地質だった
- 【フォッサマグナ、なぜ発見できた?】ナウマン先生が思わず立ち尽くした絶景…!なんと、日本列島の過去から未来までを解明するカギだったという「衝撃の事実」
- 【保護が必要な森林とは…】第6の大量絶滅を回避するために「守るべき土地」とは? 地質時代の大量絶滅から学ぶ地球との付き合い方
- 【火山列島だから知っておきたい】「富士山」で噴火がおこったら…噴火直後から飛んでくる「噴石」、身を守る「意外な最善策」
- 【地質は文化もつくる…】「銀閣寺の庭が白い」のには理由があった…!「石」が人々の心にも影響するという「納得の理由」