センバツ高校野球 選手に寄り添い、後押し 作新学院マネジャー・寺門樹広さん(3年) /栃木
◇気付いたこと伝え、勝利に貢献 第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場している作新学院の硬式野球部を支えているのはマネジャーの寺門樹広(みきひろ)さん(3年)だ。甲子園でプレーすることを目指して入部したが昨年、選手として限界を感じ、マネジャーになった。「チームを勇気づけられる存在でありたい」と46人の選手を後押しする。【鴨田玲奈】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 同部では伝統的に女子マネジャーを募集せず、男子部員1人がマネジャーを務める。練習の準備やグラウンド周辺の掃除、来客対応のほか、ノックを打ったり、練習メニューを考えたりと仕事は多岐にわたる。 寺門さんは、芳賀町立芳賀中に通っていた中学3年の時、作新学院が夏の県大会で10連覇を達成した瞬間を球場で目の当たりにした。「かっこいい。自分も一員になって、甲子園に行きたい」と進路を決めたが、レベルは想像以上に高かった。「先輩たちの打撃練習を見て、飛距離や打球の速さ、全てが桁違いで圧倒された」と振り返る。唯一ベンチ入りできたのは1年時の秋の県大会。そこでも出場機会は得られなかった。 2年生になっても1軍のAチームに入れず、同級生が遠征に向かう姿を見てどんどん自信をなくしていった。「実力の無さを痛感して、もう試合には一度も出られないのかなと諦めそうになることがあった」。そんな気持ちを押し殺して練習に励んでいた昨夏、前マネジャーの鈴木駿太郎さんから「次のマネジャーは寺門かもしれない。少し考えてみて」と言われた。 一度自分の実力に見切りを付けてしまったこともあり、マネジャーになることにあまり迷いはなかったが、小針崇宏監督から「よく考えろ」と言われ、しばらく選手とマネジャーを兼任し、昨秋の県大会では「21人目の選手」としてベンチに入った。そこで「選手よりも冷静にチーム全体を見渡すことができるし、相手投手の細かい癖にも気付ける。マネジャーとして、チームに貢献したい」と転向を決めた。小針監督は「自分の持ち味を生かして頑張ってくれ」と言ってくれた。 前任の鈴木さんは、厳しい言葉で選手を引っ張っていくタイプだった。寺門さんは強く言うことは苦手だが、「選手一人一人と同じ目線に立って、寄り添うことができる」と、長所を生かした方法で選手たちを励ましている。 Aチームに入れない選手の気持ちもよく分かるため、「野球以外の話でもいい。ただ『ちゃんと見てるよ』というのが伝わるだけで、モチベーションにつながるはず」と積極的に声を掛けるようにしている。昨秋の県大会のメンバー発表後、メンバー入りがかなわず、気持ちが沈んでいる選手たちに対しては、「まだ終わりじゃないから、諦めるのは早い」と、懸命に声を掛けた。 そんな寺門さんに小針監督は「選手の時からチームに元気を与えてくれる太陽のようなやつだった。とても素直で、ムードメーカーにもお手本にもなってくれている」と信頼を寄せる。鈴木さんも「よく監督とコミュニケーションを取って、選手にも明るく声を掛けていて、視野が広いなと思う」と感心する。 甲子園では記録員としてベンチ入りする。22日の初戦を前に寺門さんは、「気付いたことはしっかり伝えて、選手の誰よりも声を出して、日本一に貢献したい」と目を輝かせている。