1度に数百万、数千万をかける富裕層の旅で最も求められるサービスとは?
アーリーチェックインが確約できないのであれば、フライトを変える。プライベートジェットのお客様であれば、チェックイン頃の時間に着くよう調整する、または休憩用のお部屋を予約する。 私たちは事前にお客様の情報や家族構成などを現地に共有し、VIP対応の依頼や、アクティビティの手配をしています。さらに、アレルギーなど注意点がある場合、予約日前日に直接現地に電話で再確認をとるなど、徹底的かつ地道に、不便の種、トラブルの可能性を潰していきます。 時間はどんな人にも平等にあり、そして有限です。そして富裕層の方たちは、普通の方以上に時間の大切さを深く理解していらっしゃいます。有限である時間を誰とどのように過ごすのか。忙しい日々の中、大切な人と過ごすバケーションは何よりも貴重な時間なのです。だからこそ、お客様が無駄だと感じてしまうような時間はつくらないように徹底しなければなりません。 もちろん、無駄な時間も旅のひとつ、と楽しんでくださる方も多くいらっしゃいます。けれどそういう方だって、待ち時間は少ない方が絶対にいいはず。贅沢なワインやスウィーツを用意しておくなど、プラスのサービスを重ねるよりも、このマイナスを防ぐサービスこそがもっとも難しく、そして予算をかけるべき、やりがいのある仕事なのです。
ケアされていると、常にお客様に感じていただくために
例えばお子様がいらっしゃるお客様の場合、何歳で、何が好きで、という情報を事前にホテルにシェアし、お部屋におもちゃやテントなど、お子様が楽しめるグッズを依頼します。レストランでも気を遣わずに食事を楽しめるように個室やお子様用のメニューを用意するなど、できる限りのパーソナライズな対応を意識しています。 また、ご到着時にお部屋の中にスウィーツや花束、私たちコンシェルジュからの手紙を置いておいていただくなど、お客様の方向を常にホテルスタッフや私たちが見ている、ということをお伝えし続けます。 そういったパーソナライズされたホスピタリティを私達からもホテルからも、どこにいても、旅の間に感じていただきたいのです。 コンシェルジュはパーソナライズな対応が求められるため、日々お客様に向き合い、ご指摘やご指導もいただきながら改善を繰り返しています。 この仕事に「正解」はありません。もっとできたのではないかと、時に思うこともあります。けれど「思いやり」を重ねていければ、きっとお客様に伝わる。それがホスピタリティのかたちになっていくと、私は信じています。
● 才津香果(さいつかぐみ)
1982年生まれ。有料会員制コンシェルジュサービス「アルカディア」代表取締役。早稲田大学在学中から株式投資を行い、卒業後はリクルートに入社。2カ月で退社したのち飲食店や営業会社、ITビジネスを立ち上げる。2014年に事業売却、ドバイに移住する。その資金で世界のラグジュアリーリゾートをめぐり知見を得る。2019年、旅の経験を活かし、アルカディアを設立。ギフトの選定から、旅行企画、クリニックやファッションののアレンジなど富裕層のあらゆるオーダーに応え続けている。
構成/才津香果 文/安井桃子 写真/笠谷 龍 協力/株式会社アルカディア 編集/森本 泉(Web LEON)