新潟・湯沢 フジロックフェスティバル25年の歩み 音楽フェスで築くまちづくりの今後
71年に開催された箱根アフロディーテは、箱根芦ノ湖畔にある成蹊学園所有の乗風台で開催された野外音楽イベントで、海外アーティストを招へいした日本初の大規模野外フェスだ。プログレッシブ・ロックで人気を博したピンク・フロイドの初来日で話題となったが、単年で終わっている。 一方、フジロックは場所を変えながらも毎年続け、湯沢に会場を移し定着させたことで、日本に新たな音楽フェス文化が根付いたのだと柴さんは指摘する。 しかも、「従来のイベントは野外であっても椅子が用意されていたり、ブロック分けされているコンサートで、オールスタンディング形式のフェスは初めての試み」(柴さん)だった。 ◇地元小中学生招待で地域密着を そうした中、継続可能なイベントとして取り組んだのが環境問題だ。台風で中止に追い込まれた第1回の教訓は、散乱したゴミの山だったと石飛さんは振り返る。分別はもちろんのこと、リサイクルにも積極的に取り組み、今や世界から「世界一クリーンなフェス」との称賛を得ている。 また、地域とのつながりを重視し、地元の小中学生を毎年招待している。 「私たちが子どもの頃、洋楽に心ときめかせたのと同じ体験を今の子どもたちにも経験してもらいたい」(石飛さん) 地元との共生が、フジロックが四半世紀続けられてきた秘けつなのか。さらに、行政も積極的に取り組んでいるという。湯沢町企画観光課の富沢雅文課長(54)はこう語る。 「会場内の環境整備を支援しています。昨年は、トイレ整備や熱中症対策などで水不足が指摘されたことを受け、地下水を利用するため井戸掘削を進めているところです」 また、ふるさと納税の返礼品として昨年からチケットを出している(今年分は6月末まで受け付け中)。 「昨年から始めた試みで、昨年は約1億円のふるさと納税が集まりました」(同) 観光資源として十分に機能している証左の一例だろう。それだけではない。 町と連携して就職・転職サポート(職業紹介)および移住サポートサービスを行っている「きら星」の伊藤綾社長(38)は、東京から移住して起業した〝フジロッカー〟である。