【ドラフト2024】12球団から調査書! 神戸弘陵・村上泰斗の火の玉ストレートの秘密にラプソードのデータで迫る
いよいよドラフト会議の日を迎えた。全国数多のドラフト候補のなかで「無印」から駆け上がったといえるのは、神戸弘陵高の最速153キロ右腕・村上泰斗だ。 【画像】ラプソードで計測した神戸弘陵・村上泰斗の投球データ 今夏の兵庫大会では惜しくも2戦目の西宮今津戦で敗れてしまったが、初戦では飾磨工を相手に9回途中までノーヒットピッチングの11奪三振。西宮今津戦でもビハインドの8回無死一、二塁で緊急登板すると、打者6人から5奪三振のパーフェクト救援。そのストレートの球筋はまさに浮き上がる火の玉。本人も憧れの投手に掲げる藤川球児を彷彿とさせるものだった。 自身、チームともに不完全燃焼で終わってしまったが、8月にはトレーニングを再開。連日のようにスカウトがブルペンの視察に訪れた。複数の球団が弾道測定分析機器「ラプソード」を持参し、村上の投球のデータを測定していったという。 そこで村上は「ストレートの平均2500rpm」というウソのような数字を叩き出した。「rpm」とは、1分間あたりの回転数。NPBのプロ野球選手でもストレートの平均は2200rpm程度。MLBの公式データサイト「Baseball Savant」のデータによると、今季「ホップするフォーシーム」が話題になった今永昇太でも平均回転数は2442rpmだった。 球速と回転数には正の相関関係があるが、村上は145キロ前後の球速でも2500rpmをコンスタントに叩き出す。これは145キロ前後の球速帯の「上限」に限りなく近い回転数であり、ラプソードを持参した球団のスカウト陣はぶったまげたはずだ。 【分析画面で見る驚異的なスタッツ】 神戸弘陵ではラプソードを自前でも導入しており、これまでの分析データが蓄積されている。そのなかの1球のデータを借りてきたが、見る人が見ればすさまじい数字だということがよくわかるだろう。
「143.8キロ-2618rpm」の球速と回転数もさることながら、注目は「EFFICIENCY」の項目。これは「回転効率」を示す値でストレートの正回転に近いほど、パーセンテージが高くなる。この球では「98%」となっているが、村上のストレートは「97~100%」がアベレージ。端的に言うときれいなストレート回転で、それだけホップ成分も増す。 右側には変化量を示すグラフがあるが、村上のストレートは縦方向に「57.7cm」変化している。一般的にストレートの縦の変化量は40cm程度。一般的なストレートに比べ、村上のストレートは「17.7cm」も浮き上がっている。 今夏、村上はかすりもしない空振りを何度も奪ってきたが、それは高校生にとって見たことのない「火の玉ストレート」だったからだ。 【投手・村上泰斗を誕生させた神戸弘陵の寛容性】 えげつない球筋を見せ付け、もはや隠し玉ではなくなった村上だが、中学時代、大阪箕面ボーイズでのメインポジションは捕手。高校に入ってから本格的に投手に転向した。 「中学のチーム関係者から肩が強いキャッチャーがおるんやけど......と紹介されたのが村上でした。本人と面談してみたら、高校ではピッチャーをやりたいと言うので、『おお、ええよ』と。それがピッチャー・村上の始まりでした」 そう語るのは、神戸弘陵・岡本博公監督だ。村上の同学年には兵庫夢前ヤングでタイガースカップを制した松本奏がおり、正捕手候補に困っていなかったチーム事情もあるが、「やりたかったらやったらええやん」は、岡本監督の指導の特徴だ。 1年秋、村上は135~136キロの球速をマークし、練習試合ではAチームで投げることも増えたが、公式戦ではベンチ外。まだ、投手として信頼できる実力はなかった。