「なくてはならないものだった」越谷での2年間(Bリーグ・アルバルク東京 菊地祥平)
Bリーグ、特にB1は移籍した選手やヘッドコーチが昨シーズンまでの古巣と開幕節に激突するケースが多い。これは移籍が活発だからこそ起こりやすいという側面もあるが、ときには古巣と対戦する選手が双方のチームにいる場合もあり、今シーズンはアルバルク東京と越谷アルファーズのカードがそれに該当した。 A東京は、現時点ではBリーグで唯一連覇の経験を持つクラブ。選手でそれを経験したのは、昨シーズンはザック・バランスキーだけになってしまったが、今シーズンはそこに菊地祥平が戻ってきた。本人は「スタッフが全員変わってるので、別チームと思って入ってきた。アジャストしないといけない部分もある」と言うものの、連覇の際はスターターだったことを考えれば、昨シーズン頂点に届かなかったチームにもたらすものは少なくないはずだ。 現在40歳という年齢を考えると、当時のような体のキレを要求するのは酷なことかもしれない。ただ、年齢を重ねてきた分、少なくともチーム内では経験値という点で他の追随を許さない。そして、その菊地にそれまでと異なる経験を与えたのが、越谷での2シーズンだった。菊地は越谷での経験を「優勝と昇格ってまた違う喜びで、この2シーズンは僕の中ではなくてはならないものだった」と振り返る。中でも、安齋竜三ヘッドコーチと過ごした日々は菊地にとって大きな意味を持ったという。 「僕はもともと竜三さんのバスケットを学びたいというのがあって、2シーズン目は僕も迷ったんですが、『B1に上がらないまま出ていくのも……』と思ったし、竜三さんがHCをやるならということで残りました。紆余曲折あった2シーズンですが、竜三さんとはたくさん話ができた。あの人はあの人で素晴らしいバスケット観を持ってる。僕が引退した後にどういう道に行くかはわからないですが、後々バスケを語る中で、あの2年は僕にとって宝物の一つだと思ってます」 桜木ジェイアールが指揮を執った一昨シーズンは45勝15敗という好成績を挙げたにもかかわらず、プレーオフクォーターファイナルでまさかの敗退を喫する結果となったが、安齋HC体制となった昨シーズンは35勝25敗と苦しみながらも、プレーオフクォーターファイナルを難なく勝ち上がり、セミファイナルではレギュラーシーズン56勝4敗のアルティーリ千葉を連破。チームが成長していく姿を目の当たりにし、昇格の瞬間に立ち会った菊地は、改めて安齋HCのコーチングに敬意を抱く。 「傍から見れば9割千葉だろうと言われるところをアップセットできたのは、竜三さんのバスケのスタイルだったり、竜三さんの僕たちに対するモチベーションの持っていき方。そこがすごく勉強になりました。優勝とは感覚が違うんですが、同格くらい嬉しかったですね」 そもそも安齋HCは、自身が越谷の一員となり、編成面にも携わるにあたって、ディフェンスやバスケットへの姿勢を示す教材として菊地の獲得に動いたという背景がある。チームビルディングの上で、菊地の存在がB1昇格に大きく寄与したであろうことは想像に難くないが、菊地は「ゼロではないと思うんですが、僕としてはもっと貢献しないといけない部分がたくさんあった。竜三さんがそう言ってくれるならありがたいなという感じです」と謙虚だ。