中間選挙で“信任” 「トランプ化」進むアメリカ政治
上院でも「トランプ化」が見て取れる。むしろ大きいのは、来年からの政策運営の動きである。今回の選挙を受けた来年1月からの新議会では、上院で共和党が数議席伸ばした分、党内の「反トランプ」の動きが抑えられる可能性もある。 トランプ政権発足後の約2年の間、共和党内で最も穏健派であるとされるスーザン・コリンズ、リサ・マコーウスキーという2人の女性議員が常に法案投票でトランプ氏の足を引っ張ってきた。選挙直前に大きな注目を集めたカバノー氏の最高裁判事への任命承認もこの2人の動向が大きなカギとなり、コリンズは承認に賛成、マコーウスキ-が共和党の中で唯一反対した。 また、この2人に同調するように同じく共和党のボブ・コーカー、ジェフ・フレーク、ジョン・マケインの3議員は、トランプ大統領の姿勢をことあるごとに否定してきた。コーカー議員は、トランプ大統領が北朝鮮を挑発するのを懸念し、「トランプ大統領は『第3次世界大戦への道』に巻き込みかねない」と主張したことは日本でも大きく報じられた。また、マケイン氏もフレーク氏も「トランプ氏は大統領にふさわしくない」とメディアの前で何度も言及してきた。この3人はトランプ氏にとって、メディアに頻繁に登場する共和党内の天敵であった。 アメリカでは法案投票の際に、党議拘束はない。それもあって、70年代には党内が大きく割れていたが、近年は政治的分極化により、9割方は党の多数派と同調する傾向がある。この5人の議員はその「1割」の代名詞だった。 このうち、2人の女性議員は今回、非改選だったが、コーカーとフレーク両議院は引退した(2人とも共和党穏健派をまとめる反トランプ的な候補者として2020年大統領選立候補の可能性も指摘されている)。さらに、選挙前にはマケインが逝去した。コーカーの後任のテネシー州選出議員は保守のブラックバーンに決まった(同州のテイラー・スイフトさんが、穏健派から保守のブラックバーンに代わる可能性を強く危惧し、民主党のフィル・ブラッドセン候補を支持したことは世界的なニュースになった)。また、アリゾナ州選出のフレークの後任は11月11日現在、接戦でまだ決まっていないが、例え民主党候補のクリスティン・シネマ氏となった場合でも、下院議員時代での言動から、民主党内ではおそらく最も保守的な議員になると想像されている。 上院は大統領が指名した人事の承認権限を持つため、民主党が過半数を獲得していれば、閣僚らの人事にかなりの影響力を発揮できた。下院にはそうした権限はなく、人事に介入することは難しい。セッションズ司法長官とヘイリー国連大使の退任、さらにはマティス国防長官の辞任説がささやかれており、高官人事は今後の焦点だったが、これについては、この点はトランプ政権がいまだ有利である。 このように、上院共和党の「反トランプ」の動きをトランプ氏は抑え込める可能性が高いのが、今回の選挙結果だ。2012年の共和党の大統領候補であったミット・ロムニー(ユタ州選出、上院議員)が当選し、コリンズ、マコールスキと共闘し、反トランプの動きを見せる可能性もあるが、これもまだ分からない。