「微アルで適正飲酒」推進の裏にある不都合な現実 もはや、メディアに踊らされているにすぎない
今年2月に厚生労働省が「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を発表したことで、「適正飲酒」の風潮が高まっている。その結果、アルコール度数が1%未満の「微アルコール(以下、微アル)」と、3%程度の「低アルコール(以下、低アル)」が注目を集めているのだ。 【画像】適正飲酒に繋がる? 店頭に並ぶ微アル飲料 2021年にアサヒビール(以下、アサヒ)がアルコール度数0.5%のビールテイストの「アサヒ ビアリー」を発売したのを皮切りに、サッポロビール(以下、サッポロ)はアルコール度数0.7%の「ザ・ドラフティ」を、「よなよなエール」でおなじみのヤッホーブルーイングも同じく0.7%の「正気のサタン」を展開。すでに微アル市場ができあがってから3年が経過している。
また、低アルに目を向けてみると、9月にキリンビール(以下、キリン)は9年ぶりにアルコール度数3%の低アルの新商品「キリン 華よい」を発売。同月には宝酒造もアルコール度数3%の新ブランド「発酵蒸留サワー」を発売開始した。サントリーも11月にNetflixとのコラボによる「ほろよい〈ネトフリコーラサワー〉」を売り出している。 アルコール度数の引き上げ競争に「待った」をかけるかのごとく、酒類メーカーは度数を下げているわけだが、その背景にはいったいなにがあるのだろうか? また、昨今推進されている「適正飲酒ムーブメント」にはどんな問題点があるのか。
本稿ではかつてストロング系飲料を1日10缶飲み、アルコール依存症と診断され、またアルコールに関する取材を行ってきた筆者が、微アルと低アルの歴史を振り返りながら、最前線に迫る。 ■ここ数年で大きく衰退したストロング系 まず前提として触れるが、ストロング系の市場はここ数年で大きく衰退している。 調査会社インテージによると、缶チューハイ市場でアルコール度数8%以上のストロング系の商品のシェア(占有率)は、2017年に金額ベースで43%だった。それが、2023年には25%程度に低下してしまったという。