「戦わない」慈悲慈愛のリーダーシップが実は強靭な理由
「慈悲慈愛のリーダーシップ」と聞くと、包み込むようなおおらかさで皆を先導するリーダーを連想されるだろうか。もちろん理想的な姿ではあるが、時代の移り変わりが激しく、戦々恐々とした昨今のビジネス界において、そのようなリーダーは果たして結果を出せるのだろうか。 Googleのマインドフルネスプログラム「サーチ・インサイド・ユアセルフ(以下、SIY)」を開発したチャディー・メン・タンと丸井グループ 代表取締役社長CEO青井浩が「Zen2.0」で語らった、シン時代のリーダーシップに迫る。 「Zen2.0」は、国内外から禅とマインドフルネスのエキスパートたちが集う国際カンファレンス。8回目となる本年度は鎌倉の建長寺と円覚寺に、世界9カ国、549人が集い盛況のうちに幕を閉じた。そのでもなかでも注目が高かったのが、冒頭ふたりのトークセッションだ。 メンによると慈悲慈愛のリーダーは、『自分自身を穏やかに保つ』『相手に淀みない共感を送る』『相手の苦しみに寄り添って助ける』という3つの要素を持ち合わせているという。 「リーダーにとって重要なことは、修羅場でも穏やかに考え、共感や寄り添う力を未来の希望へ繋ぐことです。みんながパニックに陥っている時に、一人落ち着いて場を整え、皆の不安に寄り添い、共感力を育みながら冷静な判断を下して状況を打開する。そのようなリーダーがいれば、ステークホルダーも社員も安心しながら、より良い未来を描けます」 メンはそう話した後に、イラクで実際にあったアメリカ軍の指揮官の話をした。 「アメリカ軍がイラクを制圧した際、バグダッド市街を重装備のアメリカ軍兵士が歩いていたんです。憤慨したイラク人たちが、アメリカ軍兵士を取り囲んで、今にも襲い掛かかりそうな状況でした。もしあなたがその状況だったらどうしますか? 武力を行使して無理矢理やめさせようとしませんか? ところがアメリカ軍の指揮官は兵士たちに『笑いかけなさい』と指示したんです。最初は戸惑っていたイラク人たちも、徐々に怒りを鎮めて自分の家に戻っていき、その日、死人はひとりも出ませんでした。慈悲慈愛のリーダーシップは、生死を分けるような場面で驚くべき結果をもたらすのです」