「戦わない」慈悲慈愛のリーダーシップが実は強靭な理由
『戦わない』ということ
それに対して青井は、「戦わない」重要性を説く。 「ビジネスでよく使う『戦略』という言葉は、戦いを略すと書きます。一般的に戦略というと、何か大きな戦いに挑むようなイメージを持たれるかと思いますが、実はまったく逆。例えば、少林寺拳法は武術を身に付けるだけではなく、武力を制御するための教えや人としての心構えもセットで学びます。そして武の本質は戦うことではなく、戦いを省くことだと教わります。僕はこの『戦略=戦いを省く』という考え方がとても好きです」 ビジネスではまず市場があり、その市場をどう取っていくかが命題となる。3CやSWOT、PEST分析などで取り巻く環境を明らかにして戦略を導き出す。しかし、青井はマインドセットを変えることで、戦わない戦略を生み出せると言う。 「既にある市場を前提にすると、どうしても戦略が“戦い”になります。市場を取り合うゼロサムの戦い。ですが、今はまだないけどこれから新しく市場を作ればいいという発想を持てば、景色はガラリと変わります。あるいは今はないサービスやプロダクトを自分たちで作ればいい。その誕生を人々が喜べば、みんなが幸せになれるんじゃないか」 それに対してメンは、Googleが立ち上がって間もない頃のことを振り返った。 「私がGoogleに入った時、まだまだ小さな会社で利益がまったくありませんでした。常に頭の中にあったのは、会社は来年もつかな……ということ(笑)。『サーチエンジンの会社なので、広告をとるべきだ』とみんな考えていたのですが、ファウンダーのラリー・ページは『僕らがやろうとしているのは、世の中に新しい価値を生むこと。単純な広告はマイナスの価値しか生まないから嫌だ』と言ったんです。 その時ラリーが洞察のある話をしてくれました。『このサーチエンジンを使っている人たちに役立つことができて、圧倒的な価値を生み出せたら、その人に役に立つ広告であれば入れてもいい』と。ご存知の通り、このターゲティング広告でGoogleはたくさんの利益を生むことができました」 ユーザーに役立つことに徹底的にフォーカスし、その後にビジネスのことを考える。「両方を追求することは難しいが、その難しさと向き合うことで新たな道が拓ける」とメン。